究極の動力性能を追求して進化してきたコルベット
続いて2005年から生産が開始されたC6型コルベットは、さらにエアロダイナミクスを改善するために、よりシャープなボディデザインを採用して登場した。
搭載エンジンは、6リッターに排気量拡大されたV型8気筒OHV、LS2型で、404馬力を発揮したこのエンジンは、2008年モデルではさらに6156cc仕様のLS3型に進化。最高出力は436馬力に向上した。
C6型コルベットでは、ほかにも魅力的なモデルが続々と復活している。Z06やZR1(C4ではZR-1が正式な表記だった)、そしてグランスポーツなどがそれだ。
Z06に搭載されたエンジンはLS7型と呼ばれた7リッター仕様のV型8気筒OHV。最高出力は512馬力という数字だった。
ブルーデビルの愛称で開発が進められていたという6.2リッターのLS9型エンジンを搭載するZR1は、647馬力の最高出力を叩き出したまさに悪魔のようなスーパースポーツだった。
ボディパネルの多くにはカーボンファイバーが使用され、このハイパワーに加えて軽量化と優れた空力特性、そして優秀なシャシーの相乗効果によって、シボレーは実際にドイツのアウトバーンで309km/hの最高速を記録。スペックシートには330km/hの数字が記されている。
C1型コルベットの誕生から60年を迎えた2013年。シボレーは、C7型コルベットを発表する。日本では残念ながらいまだに使用できないが、スティングレイのサブネームがC3以来復活したのも見逃せないポイントだ。
軽量なFRPとカーボンからなるボディは、やはりC2以降の伝統を継承して薄いボンネットラインを特徴とするロングノーズスタイルだが、これまでとは異なる大きな変更点は、リヤウインドウがラウンドデザインではなくなったこと。これはおもにモータースポーツ部門からのリクエストによるものと説明されている。
C5以降、C6でも積極的なレース活動を続けてきたシボレーは、当然のことながらC7でもその活動を継続する計画を持ち合わせており、そのためには空力面で有利なノッチバックスタイルを、開発段階から望む声が強かったのがその理由だったという。
このC7にも、これまでの伝統を受け継ぐZ51やZ06、Z07、そしてグランスポーツといったパフォーマンスパッケージが続々と設定され、それぞれにカスタマーから高い支持を得ることになる。そのなかでもとくにコレクターを刺激しているのは、2017年に1000台の限定生産が発表されたグランスポーツコレクターズエディション(Z25)。
さらに同年には、6.2リッターのLT5型V型8気筒DOHC+スーパーチャージャーエンジンを765馬力の最高出力で搭載するZR1を発表。加えてそのコンバーチブル仕様も発表した。
そして2019年、現行モデルとなるC8型コルベットが発表されるわけだが、それはこれまでのコルベットの歴史を大きく転換させるトピックスを秘めたモデルだった。
最大の話題はエンジンの搭載位置がフロントからリヤミッドシップへと変更されたこと。エンジン自体はC7譲りのLT2型と共通だが、潤滑方式はドライサンプに、またミッションも8速DCTへと進化を遂げているが、一方でMTの設定がないのは一部のファンには残念なところだろう。
ちなみにコルベットがMTを設定しなかったのは、1953年と1954年のC1、そして1982年のC3のみである。
最高出力で502馬力、最大トルクでは637Nmを発生するLT2型ユニットをミッドに搭載し、こちらも完全新設計のダブルウイッシュボーンサスペンションとの組み合わせによる走りがいかに魅力的なのかは想像に難くない。
さらに日本仕様のC8は、いずれのモデルでもブレンボ製の4ピストンモノブロックキャリパーや大径ローター、電子制御LSDなどを備えるZ51パフォーマンスパッケージが標準装備化されているから、走りのレベルはさらに高まる。
近く日本でも発表予定のZ06は、679馬力のLT6型6.2リッターV型8気筒DOHCエンジンを搭載するモデル。独自のフロント&リヤスポイラーを装備するなど、こちらもよりスポーティな走りにフォーカスしたモデルとなっている。
そして、C8コルベットからの派生形で、いまもっとも注目されているのがE-RAYと呼ばれるモデル。2024年モデルで生産化が実現するとされるE-RAYは、コルベット初のハイブリッド車であると同時に、初の全輪駆動車ともなる。フロントアクスルに163馬力の最高出力と165Nmの最大トルクを発揮するエレクトリックモーターを搭載。それで前輪を駆動するシステムを持つからだ。
E-RAYは残念ながら外部充電が可能なPHEVではないためEV走行が可能な距離は短いが、システム出力で654馬力というZ06に匹敵する数字はなかなかに魅力的だ。
コルベットが歩んできた70年間の道のり。そしてその中で現在まで受け継がれたものと失ってしまったもの。その歴史を簡単に振り返るだけで、70年という時間の重みは強く我々の心に伝わってくる。