この記事をまとめると
■このメーカーといえば……という代表的な技術を紹介
■登場によってメーカーイメージが激変するほどのインパクトのある技術だらけ
■過去の技術が再発掘されて注目を浴びるケースもある
メーカーを代表する看板技術を考えてみた
工業製品を売るために重要なのはユーザーニーズの創出、コストパフォーマンスの高さなど重要なことは多数あるが、ブランドに対する信頼性や安心感を生み出す根源的な力となるのは、独自テクノロジーといえる。技術力がなくストーリーだけでブランド力を高めようとしても、少なくとも工業製品というジャンルにおいては難しい。
自動車メーカー各社は独自の技術によってブランド力を高めているといえる。
そのなかでもブランド力を高めるのにもっとも効果的だったと感じるのがトヨタのハイブリッド・テクノロジーだ。1980年代、日本の自動車マーケットはトヨタ・日産の二強といえる状態で、「技術の日産、販売のトヨタ」といったブランドイメージで語られることが多かった。
その当時のトヨタ車は、「技術的には他社の真似っこで、価格設定などの販売力に頼っている」ブランドという風に捉えられていた。実際には、トヨタの技術が劣っていたわけではないが、そうしたイメージがあったのは事実だ。
そんなトヨタが、テクノロジーにおいても先進的という風にブランドイメージを大きく変換したきっかけは、1997年にプリウスを誕生させたときだろう。当時のクルマ好きでも構造と制御を理解するのが難しい、動力分割機構を持つシリーズパラレルハイブリッドは、トヨタの技術力が、じつは先進的であることをマーケットに印象付けた。
現在、トヨタは全方位的にカーボンニュートラル技術を磨いているというのはクルマ好きにとっての共通認識となっているが、初代プリウスで複雑怪奇なハイブリッドシステムを市販したことにより、「トヨタはすごい技術力がある」ブランドという風に見事に変身することができたといえる。
先進的でインパクトのある技術が企業イメージを変えたという点でいえば、ホンダが1989年に量産化した「VTEC」技術も同様の効果があった。あらためて整理すれば、VTECというのはカムシャフトをロー/ハイと切り替えることで、バルブのリフト量とタイミングを変更させるという技術。パフォーマンスを高めるハイカムと、使いやすさや排ガス浄化に貢献するローカムを組み合わせることで、スポーツエンジンを量産車に載せるためのネガを解消した技術といえる。
この登場が、ホンダ車=スポーティというブランドイメージを加速させた。実際、VTECが登場する以前のホンダ車でいえば、1984年に誕生したZCエンジン以外にツインカム(DOHC)エンジンはラインアップされていない状態だった。1980年代前半からF1にエンジンサプライヤーとして参戦していたものの、市販車については燃費に優れた実用モデル中心というイメージが強かったのだ。
それがVTECテクノロジーの登場とそのエンジンを積んだモデル(インテグラ、シビック、CR-Xなど)の走りのよさによって、一気にスポーティなモデル揃いのブランドといった風にイメージを変えていったというのは、その当時をリアルタイムに感じた筆者の偽らざる印象だ。
そんなトヨタとホンダのパワートレイン技術が競い合っていたのが2000年代の自動車マーケットだ。そのテーマは省燃費で、いかに優れた燃費であるかはユーザーがクルマを選ぶときの重要な条件となっていた。