絶版S2000にも新車のシビック・タイプRにもアイテムを用意
ところが驚きは、さらに一段と高い速度域にある。首都高から東北道まで、片道350km+αを走らせたが、速度域を上げても接地感が薄まらず、雑味のないステアリングフィールが途切れず、ビシッとしたスタビリティを発揮し続ける。「これがルーフの高い国産のコンパクトミニバンのフットワークか?」と、乗り手が何度も自問自答するほどだ。
横風も強かったのだが、風圧で走行ラインが乱されることもない。軸が太くて容量の大きいダンパーが滑らかにキチンと仕事をこなすからこそ、その足さばきは継ぎ目や少々のバンプに対しても決して固すぎず、どっしり感すら返してくる。おそらく、パワートレインがガソリンの純ICE版で、ハイブリッド版より70kgほど車重が軽い恩恵もあるだろう。
しかもCVTであるにも関わらず、100km/h超からの加速でも、いわゆる「ラバーバンドフィール」と呼ばれる間延びした駆動レスポンスではない。CVTなのにトルク感の追従が自然で、一瞬だけエンジン音は唸るが、すぐさま望み通りの巡航速度にのせられる。間髪をおかず適切トルクとエンジン回転がバランスするのに、風圧やスタビリティが乱れない分、油断してつい踏み込んで、思った以上に高速巡航になってしまう、そんな印象だ。
日常でよく使う走行域を、空力と足まわりでより快適にしつつ、同じパワートレインのままでも気持ちよく踏めるフリードに仕上がっている。そこにモデューロXのマジックがあるのだが、そのアプローチは、新しい車種でコンプリートカーを制作することにとどまらない。
モデューロXを手がけるホンダアクセスは、4年前の2019年には「20年目のマイナーモデルチェンジ」を掲げ、1999年登場のS2000用のコンプリートキットや専用アイテムを多数リリースした。
トランクスポイラーとサイドストレーキは復刻で、フロントエアロバンパーとフロント側5段階の減衰力調整付きスポーツサスペンションは新たに開発されたものだった。
20周年記念ロゴの入ったオーディオカバーのような限定アイテムもあれば、乗り続けていれば擦り切れてくるであろうカーペットなど、長年乗るオーナーだからこそ嬉しいアイテムだった。
愛車との関係を深めるパーツ&アクセサリーは、べつにニューモデル専用でも専売特許でもないのだ。
モデューロXが手がけるパフォーマンスパーツはストリート用だからこそ、機能面でも明確な提案がある。ニュルブルクリンク北コースで世界最速FFとなったとおり、シビック・タイプRノーマル仕様のハイパフォーマンスぶりはお墨つき。
だが、クローズドコースより公道の比重が高いオーナーに向けて、ホンダアクセスはリアルカーボンの「テールゲートスポイラー」を開発したのだ。リフトバランスを整えて軽量仕上げにしたことで、高速域でのターンインの感覚がよりスムースになるという。
先代タイプRより佇まいがぐっと洗練された現行タイプRだけに、大人のGTとして乗りたいという要望に応えたのだ。
ホンダという自動車メーカー発のチューニング&カスタマイズだからこそ、より自由で柔軟に楽しめて、手をかけるほどにオーナーと愛車が近づくという考え方なのだ。