中国ではアメリカよりもラインアップが豊富!
中国市場では本国アメリカではラインアップがなくなったセダンや、BEV(バッテリー電気自動車/アメリカではラインアップされていない)など、アメリカよりもはるかに多いモデルラインアップとなっている。ビュイックのいまの地位を決定づけたのはラグジュアリー大型ミニバン(中国では「高級商務車」とカテゴライズされる)となるGL8となるだろう。
初代モデルは1999年に中国国内で生産開始されている。当時はミニバンを中国国内でラインアップするメーカーは少なかった。まだ「ひとりっ子政策」を政府が進めていたこともありミニバンニーズは期待できないと判断していたようだ。そのためGL8もファミリーミニバンというよりは、政府関係や大企業などでの幹部用社用車として重宝され、そのような需要がいまも目立っており一般大衆の憧れにもなっており、日系メーカー車も含め、ライバル車よりも高いステイタスの維持を続けているのである。
GL8は人気はあるものの価格は高いので庶民レベルではなかなか購入できないので、GL6という弟格のモデルを投入したりもしている。筆者は「英朗(エクセル)GT」というトヨタ・カローラクラスのコンパクトセダンが好きなのだが、その弟格の「凱越(エクセル)」というモデルをラインアップするなど、とにかく中国国内のラインアップは緻密なものとなっている。
中国市場でよく売れるので、見た目も中国を意識したモデルが多くなり、一部アメリカ車ファンからは「中国臭が強い」として敬遠されることもあるようだ。また、アメリカでもラインアップされている「エンビジョン」の初代モデルは中国生産車がアメリカで輸入販売されていた。また、2023年夏に北米市場導入予定となっているクロスオーバーSUVの「エンビスタ」は、中国での合弁会社である上海通用五菱汽車で開発され(すでに中国市場ではラインアップされている)、北米導入モデルは韓国で生産され輸入される予定となっている。
かつて友人が日本では正規輸入販売されていなかった、6代目ビュイック・センチュリーをアメリカから個人輸入して乗っていた。「cc」ではなく「キュービックインチ」で設計されたV6エンジンは3.1リッターとなり、ベンチシート&コラムシフトを採用。フカフカなソファのようなシートに、波を乗り越える船のような乗り味を見せるソフトサスペンションなど、V8でもなくFRでもなかったものの、その乗り味や存在感はアメリカ車そのものであった。しかし、いまやビュイックだけではなくアメリカ車全体の話ともいえるが、いまのビュイック車には過去に強調していた「アメリカ車臭」をなかなか感じることがなくなってしまったのは寂しい限りである。
中国市場があるからブランドが残っているともいえるが、ただ筆者は東西沿岸部をよく訪れるが、内陸部や南部はあまり訪れる機会はないので、そのような地域ではアメリカでもビュイックブランドはいまも根強い需要があるのかもしれない。