メルセデス・ベンツとポルシェの強力タッグが実現
また、500Eはポルシェが開発と一部の製造を担ったことでも話題となりました。一説によると、ポルシェが経営難に陥っていて、メルセデス・ベンツが救済のために依頼したとされています。が、実際には、ツッフェンハウゼンのレンガ造りの旧弊な工場で雇った東側からの移民労働者を(924~968の4気筒ポルシェ以外に)より効率的に働かせる仕事を増やしたかったとかなんとか。
真偽のほどはわかりませんが、500Eの生産終了と同時に旧工場は取り壊され、しばらくあとに建て替えられています。ちなみに、ポルシェが開発パートで担ったのはW124のエンジンルームにV8を突っ込んだ際の強化作業と、重量増しに対応するサスペンション&ブレーキの強化、そして連続高速走行時のコンディション維持対策とされています。
ポルシェ側はバルクヘッドの作り直しやSLのサスペンション、ブレンボ(後期はATE)のキャリパーへとアップグレードすることで対応。高速走行時の熱対策としては、フロントから入る空気の流れを整理するなどとされています。また、この際に500Eの数少ないアイコニックポイントとしてフレアしたフロントフェンダーが導入され、ツッフェンハウゼンで組み立てたものは樹脂製、メルセデスが作ったものは鋼板製とされるなど、マニアの間ではちょっとしたトリビアになっている模様。
1万台あまりが生産された500E/E500ですが、日本には1000台以上が正規輸入され、その倍くらいの数が並行輸入で上陸したといわれています。たしかに、当時の輸入車ショップはどこもギラギラな500Eが飾ってありましたからね。とりわけ、最終ロットに近かった500Eリミテッドなどは並行モノしか手に入らなかったためか、かなりのプレミア価格になっていたかと。このモデルが履いていた17インチ、6本スポークのホイールも同じデザインが市場にあふれていましたっけ。
きわめて高性能なわりにシックな外観で、ぱっと見は普通のEクラスと大差なかったためか、イケイケなユーザーのみならず、従来のメルセデスユーザーにも大いにウケた500E。弱点と目されたミッションも(主観としては)さほど深刻なものでもなかったようです(搭載されていたのは、これまたSLやSクラスと同じ722.3ミッション)。部品構成がほかのEクラスと違うため、消耗部品などメンテナンスにかかる手間と費用はいささか高め。それでも、国内では10万、20万キロと走ってなお、元気なパフォーマンスを発揮している個体が数多く存在するといわれます。
また、AMGが500Eをベースにスープアップした6.0や、ロリンザー、ブラバスといったスペシャリティも少なからず流通していました。5リッターと6リッターの差は決して小さなものではなく、筆者も強く惹かれたものの「ベースが優れているからこそ、チューニングカーが映える」原則を思い出し、あらためて500Eの偉大さに感服した記憶もあります。
中古車市場には意外なほどのタマ数が出まわっており、その多くがきちんとメンテナンスされているというのも500Eならではの現象かと。これこそ、乗る人と売る人が「わかっている」というレアなケースにほかなりません。そうはいっても、生産からすでに30年近く経っているクルマですから、手に入れるなら信頼できるファクトリーの目星をつけてから、というのが理想形でしょう。