装備が充実してもセレナはエルグランドの代わりにはなれない
このままエルグランドを放置すると、ユーザーをこれから発売される新型アルファードなどに奪われる心配がある。
そこで新型セレナは、e-POWERルキシオンを用意したとも言える。従来型エルグランドの商品力をカバーして、エルグランドの乗り替え需要をセレナe-POWERルキシオンに誘導する狙いがある。
エルグランドの価格は、直列4気筒2.5リッターエンジンを搭載する250ハイウェイスタープレミアムが479万7100円だ。セレナe-POWERルキシオンの479万8200円とほぼ等しい。
両車を比べると、エルグランドはLサイズミニバンだから、ボディが大柄で外観は立派に見える。インパネの周辺も上質だが、内装はセレナも現行型になって見栄えを大幅に引き上げた。質感の差は近付いている。
居住性は互角だ。1/2列目のシートはエルグランドが豪華だが、3列目の座り心地はセレナが勝る。エルグランドは1/2列目を重視して開発され、3列目は床と座面の間隔が不足して足を前方へ投げ出す座り方になる。
そしてパワーユニットは、セレナはハイブリッドのe-POWERで、エルグランドはノーマルタイプの2.5リッターだ。衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能は、プロパイロット2.0などを標準装着するセレナe-POWERルキシオンの圧勝になる。したがって、ほぼ同価格のエルグランドとセレナを比べると、機能では明らかに後者が勝り、買い得といえる。
ただし、先進装備の充実を理由にエルグランドからセレナへの乗り替えが進むかといえば、そこは難しい。Lサイズミニバンでは外観の見栄えも重要で、エルグランドのユーザーもそこを重視して選んでいるからだ。見栄えに関しては、いまでもエルグランドが勝る。また、車両のヒエラルキーでもエルグランドが上まわり、セレナe-POWERルキシオンへの乗り替え需要を誘致するには困難が伴う。
日産はかつて上質なコンパクトカーのティーダを廃止して、そのユーザーを先代ノートメダリストへ受け継ごうとしたが、実際にはそうならなかった。そこでノートオーラを用意した経緯がある。ユーザーの気持ちを考えると、セレナがいくら頑張っても、エルグランドの代わりにはなれない。日産は新型エルグランドを早急に開発すべきだ。