エアレスタイヤ実用化でランフラットタイヤの立ち位置が変わる
スペアタイヤやパンク修理キットを積む必要がなく、車両重量を軽くできるというのは省燃費効果にもつながる。そのため、すべての量産車がランフラットタイヤを採用することになるであろう、とかつて言われていたこともある。
しかしながら、現実的にはランフラットタイヤは21世紀初頭に予想されたほどは普及が進んでいない。その理由として考えられるのは、主にランニングコストの課題がクリアできていないことにある。
ランフラット技術は、タイヤのサイドウォール(側面)の内側に補強ゴムを入れることで実現している。通常のタイヤには使わない部材が必要になるためタイヤ自体のコストが上がってしまう。
またパンクしても80kmほど走行できるというのは安全性においてはメリットとなるが、空気圧ゼロでの走行中にタイヤが傷んでしまうことがあり、パンク修理が難しい傾向にある。 実質的にパンク=タイヤ交換となってしまうのだ。前述したようにランフラットタイヤは高価なので、通常タイヤのパンクを修理して使い続けるのに比べると圧倒的にコスト高の要因となってしまうのだ。
さらにユーザーレベルで指摘されることの多いウィークポイントが「乗り心地が悪い」ことだ。サイドウォールを補強するという構造上、どうしてもコツコツ感が強くなってしまう。
純正でランフラットタイヤを履いているクルマであっても、タイヤ交換時に通常のタイヤへ変えるケースもあるという話は珍しくない。わざわざ高いお金を出して、乗り心地の悪いタイヤを買おうという気持ちにはなれないだろうから納得だ。 もっともランフラットタイヤから通常のタイヤへ変える場合は、パンク時の対応としてパンク修理キットを積んでおくことが必要になる。
最近では、そもそも空気を使わないエアレスタイヤの開発も進んでいる。こちらが実現すればパンクという事象がなくなるため、いっそうランフラットタイヤを選ぶ意味はなくなるかもしれない。
もっとも一般向けのクルマがエアレスタイヤになってパンクという概念が消えた世界において、スーパースポーツだけはランフラットタイヤを使うことで差別化、パフォーマンスを高めるということになるかもしれない。