お茶目にキャラ変したルパン三世にSSKは似合わなかった
SSKはSシリーズをショートホイールベース化(3430mm→2950mm)して、コーナリング性能を追求するとともに、戦艦なみのシャシーを軽量化(総重量1700kg)することで、よりレーシーな走りを実現しています。搭載されたエンジンは7.1リッターの直列6気筒SOHCで、これにクラッチ付きスーパーチャージャーを装備。過給のセッティングによって200ないし300馬力を発生し、最大トルクは680Nmに及んだとされています。
その結果、最高速は190km/hとこれまた当時としては度肝を抜かれるようなパフォーマンスだったに違いありません。ちなみに、クラッチ付きスーパーチャージャーとはATのキックダウンに似たもので、アクセルペダルを床まで踏み込むことでクラッチがつながって過給が始まる仕組み。これならルパン三世も、たびたび床までペダルを踏み込んだことでしょう。
と、思いきやファーストシーズンの設定によると、エンジンはフェラーリの水平対向12気筒に換装されているとのこと。たしかにルパン三世は第1話でフェラーリ312BらしきF1を颯爽と乗りこなしていますが、まさかこのボクサー12エンジンを使いまわしているとは驚きです。もっとも、SSKオリジンの200~300馬力に対して、フェラーリは500馬力ですから、逃走マシンとしてはこれくらいパワーがあったほうがよかったかと。
このあたりの設定は、ファーストシーズンの初期に演出を担った大隅正秋氏の見識によるものと思われ、筆者が勘ぐると「ははぁ、ジェームズ・ボンドが戦前のベントレーのエンジン換装していたのがヒントか?」てな具合。ちなみに、SSKがフィアットに変更されたのは視聴率の低迷を受けて、大隅氏から代って演出を担った宮崎 駿氏のアイディア。宮崎氏によるとSSKは「ナチの親玉じゃあるまいし」とかなんとかで、ニヒルで殺しも厭わなかったルパン三世が、手品で少女を励ましちゃうキャラにまで変貌を遂げています。
ルパン三世はテレビで放映されるたびに軒並み高視聴率をゲットしていますが、あらためて金曜ロードショーでの視聴率も気になるところ。1999年の金曜ロードショーで「カリオストロの城」が放送された際は23.4%という数字で、劇場版ルパン三世の最高記録をたたき出しています。このうち、SSKを応援しているクルマ好きが何パーセントいるのか、これまた気になるのは筆者だけではないでしょう。