サーキットの名門が「悪路に降臨」したらもの凄い強かった! そもそもなぜ「HKS」がダートラに挑戦しているのか? (2/2ページ)

HKSランサーエボリューションの復活に期待

 こうしてダートトライアルでの挑戦を決定したHKSは、数年前からマシンの基礎開発を進め、2022年のJAFカップオールジャパンダートトライアルで自社開発のランサーを投入し、JD1クラスで3位入賞。そして、前述のとおり、2023年の開幕戦・京都で全日本ダートトライアル選手権への参戦を開始し、デビュー戦を勝利で飾っていたのだが、それもそのはず、同社が手がけたHKSランサーエボリューションには独自のアイディアが注ぎ込まれている。

 近年のD車両はラジエターをリヤに搭載するマシンが主流となっているが、「できるだけ重量物を中央に置きたかった」と大森氏が語るように、HKSランサーエボリューションは助手席にラジエータを搭載。そのために、バルクヘッドに穴を開けて空気を導入するほか、エアクリーナーの吸入口も助手席にマウントするなど独自のレイアウトが行われている。

 さらに、同モデルの特徴は「空力のために、できるだけ腹下をフラットにしたかった」と大森氏が語るように、サーキットを舞台にとするレーシングカーのように、アンダーガードでフラットボトム化を追求。そのために、センタートンネルとマフラーをリフトアップするなど、大胆なモディファイが実施されている。

 そのほか、回頭性を高めるべくメンバー位置を変更してホイールベースを短縮するなど、細部の作り込みに余念がない。

 HKSランサーエボリューションの車両重量は約1250kg、エンジンの最高出力も約470馬力とライバル車両と比較しても飛び抜けた数値ではないが、これらの独自のアイディアを注ぎ込むことにより、抜群のパフォーマンスを発揮しているようだ。

 事実、ステアリングを握る田口は「いままでにないランサーですね。ハンドリングがいいのでコントロールしやすいし、動きがクイックです。パワーや軽量化など、まだ課題はありますが、スタートのパッケージとしては悪くない。高速コースから中低速コースまでオールマイティに速いと思います」と好感触。

 その言葉を証明するように、第2戦の丸和でも、ドライで行われた土曜日の公開練習で4番手タイムをマークするなど順調な立ち上がりを見せいていた。

 それだけに、日曜日の競技本番でも田口×HKSランサーエボリューションの躍進が期待されていたのだが、雨に祟られた第1ヒートで予想外のハプニングが発生。「たぶん、駆動系の問題だと思うけど、右コーナーを抜けるところで、クルマが左に進んでそのまま側面に乗り上げてしまった」と田口が語るように、痛恨のロールオーバーを喫し、そのままリタイアになってしまったのである。

 まさに田口×HKSにとっては悔しいリザルトであり、トラブルの原因や今後のリペアの可否、第4戦・砂川以降の活動プランが未定という状況となった。

 それでも「開幕戦の京都からアンチラグの制御を変更するなど確実に進化しています」と田口が手応えを語っていたほか、HKSの大森氏も「ブランド戦略的にHKSは未舗装路でも速いというイメージをつけたいし、ダートトライアルを盛り上げたいという気持ちもあります」と語っているだけに、HKSランサーエボリューションの復活に期待したい。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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