さまざまなコストの面でも厳しくなる
全高を低くできない
世の中のスライドドア車を思い出してもらえれば気が付くはずだが、スライドドア車で全高の低いクルマなど見たことがない。構造上1700mm程度は全高がないとスライドドアを装備することは難しい。
都心部ではまだまだ全高1550mm以下の機械式駐車場も珍しくない。過去には機械式駐車場に対応したスライドドア車もあることにはあった(三菱eKワゴンなど)。そのため完全に出来ない訳ではないが、コストがかさんでしまう。結局全高の低いスライドドア車が継続しなかったことからも、開口部の高さが低いスライドドア車はスライドドアのメリットをあまり得ることができないため、投入したコストに対して売れなかったということであろう。
値段
通常のヒンジドアに比べて値段が高くなってしまうのもスライドドアの欠点と言える。先に述べたように補強も必要になるし、構造も複雑なので、どうしても高価になりがちである。また、故障のリスクもヒンジドアに比べて多いし、修理費用も高価になりやすい。
また、修理費用が高価になりやすいことに似通ったことだが、経年劣化によるガタツキが発生しやすいという欠点もある。ヒンジドアに比べて重く、取り付け部の剛性が確保しにくいため、この欠点も構造上仕方ないものだと言える。
スライドドアの欠点はクルマの基本性能である「走る、曲がる、止まる」に影響する部分が多い。そのため、スライドドア車を開発設計する場合は、開発者たちは相当な難しい課題をクリアして走行性能を確保していると言える。ひょっとしたら高性能なスポーツカーを開発するよりも大変かもしれない。それでもスライドドア車が開発されて販売されるということは、今回紹介した欠点よりも利便性の高さという長所がウケて、売れているからなのだ。