北米・欧州で評価されるヒョンデの高級車ブランド「ジェネシス」
ただ話を聞くと、外資ブランド車に乗るのは都市部に住む若年富裕層やヒョンデのような財閥系企業に勤める若年エリートなどが多いと言ったことを、話を聞いた関係者が話してくれた。さらに、「比較的年齢層の高い富裕層はジェネシス車に好んで乗りますよ」とも教えてくれた。愛国心が高いというか、韓国メーカーの高級ブランドということで、ソウル以外でも広く乗られているようだ。事実、ソウル市内ではとにかくジェネシス車を多く見かけることができた(北米で見かける頻度の10倍以上といっていい)。
ジェネシスとは、ヒョンデ版レクサスといっていい、韓国・現代(ヒョンデ)のプレミアムブランドとなる。そもそも韓国国内で、ヒョンデブランドのラインアップのひとつ、つまり車名として「ジェネシス」は始まり、その後2015年に独立したブランドとなった。
トヨタがレクサスをはじめたころと同じく、当初は北米市場に焦点を絞ってブランド展開を進めた。FF(前輪駆動)もしくはFFベースのAWDがメインとなるヒョンデブランドに対し、ジェネシスはいまもってFR(後輪駆動)もしくはFRベースのAWDのみのラインアップを貫いている。
前述した関係者が面白い話をしてくれた。「ジェネシスは北米のほかは欧州で展開しているぐらいで、中国や東南アジアなどでは展開する予定はありません」とのこと。そしてさらに、「中国や東南アジアではヒョンデブランドすらトヨタほどのステイタスはなく、認知もそれほど高くありません。そのなかでジェネシスを展開しても相手にされません」と説明してくれた。
欧州では母国韓国よりも早くニューモデルをリリースしているところを見ると、逆に欧州市場についてはヒョンデグループとしてはジェネシスブランドを展開する市場として自信のある地域ということになるのかもしれない。
日本市場への再参入を見ても、ヒョンデの動きは慎重なように見える。経営トップの代替わりが行われたばかりだが、先代のころの市場開拓はまずタクシーなどのフリート販売を積極的に行い、シェアを取ってから本格進出という、ある種のイケイケパターンが目立っていた。
事実、中国では北京はヒョンデの現地合弁会社「北京現代」のお膝元ということで、ヒョンデのタクシーも目立っていたし、ほかの大都市でも目立っていた(いまはBEVタクシーが積極導入されることもあり、中国メーカー車が目立っている)ことで、「タクシーとしていっぱい走っている」という消費者の反応もあり、販売シェアは確保できてもブランドステイタスが低迷していた。
さらに、2016年に韓国はTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備し、これに中国政府が反発して中国国内で大規模な韓国製品の不買運動が起き、ジェネシス参入のタイミングを逃したことも大きいといえるかもしれない。
ジェネシスブランドはセダンメインではあるものの、クロスオーバーSUVやBEVも存在し、さらには欧州メインだと思われるが、シューティングブレークなどバラエティに富んだラインアップになっている。今後ジェネシスブランドが新規参入する市場があれば、そこではヒョンデが自信を持つことのできたマーケットと捉えることができるかもしれない。