ニュル市販車最速挑戦でアメリカ車が速いことを証明した
ファーストモデルとなったプロダクションモデルのバイパー、「RT/10」は、1991年12月に発売されたのだが、それはサイドウインドウさえも着脱式とする、きわめてスパルタンな仕様のモデルだった。
最高出力は400馬力に抑えられたが、1995年にはあのデイトナ・コブラの復活ともいうべきクーペ仕様のバイパー「GTS」を追加設定。こちらは450馬力の強力なエンジンを搭載しての誕生となった。
バイパーの市場での人気はクライスラーの予想どおりに高く、2002年には搭載されるV型10気筒エンジンをさらに8.3リッターにまで拡大した、セカンド・ジェネレーションのモデルも発表された。パワーは517馬力にまで向上し、同時に車名もバイパー「SRT/10」に改められた。
2008年にはさらに排気量を8.4リッターに拡大しているが、このときはマクラーレン・パフォーマンステクノロジーとリカルドの両社がテクニカルパートナーだった。最高出力は608馬力へと大幅に向上し、エンジンフード上には新たにエアアウトレットが追加されたのが外観上の特徴だ。
また、2008年からは「ACR」と呼ばれるよりスパルタンな仕様を選択することも可能になった。ちなみにACRとは「アメリカン・クラブ・レーサー」の略。専用のエアロパーツやサーキット走行にフォーカスしたサスペンション、スタンダードなACR比でさらに18kgのダイエットを可能にしたハードコアパッケージなどの設定もあった。
このモデルでダッジはニュルブルクリンクの市販車最速タイムアタックを行い、7分22秒1を記録。2012年には、バイパーACR-Xが7分3秒058を記録して当時の世界最速の量産市販車となった。
そして、バイパーの最終モデルとなったのが2012年のNYモーターショーで発表されたサードジェネレーション。このときからブランドは長年親しまれたダッジではなく、クライスラーのハイパフォーマンス開発部門、「SRT」を掲げることとなり、生産モデルもクーペのみに統一された。
フロントのV型10気筒エンジンは649馬力にまで強化され、上級モデルのGTSでは、アクティブサスペンションの標準採用など、シャシー面でも多くの進化が見られた。そして2014年にはダッジとSRTの両ブランドが統合されたため、車名は再びダッジ・バイパーに。2017年8月には惜しまれつつもその生産が終了している。
オンロードのみならずサーキットでもその圧倒的な存在感を示してみせたバイパー。その勇姿を忘れる者はいないだろう。