乗用車にリトレッドタイヤが採用されないワケ
製法は2種類
リトレッドタイヤにはふたつの製法がある。プレキュア製法とリモールド製法だ。このふたつは加硫と呼ばれるゴムに硫黄などを入れて熱と圧力を加えて弾性や強度を確保する工程のタイミングが異なる。
プレキュア製法は使用されたタイヤ表面のトレッドゴムを削り取って接着面を形成、この古いトレッドゴムが削り取られたタイヤは、リトレッドタイヤの土台となるため「台タイヤ」とも言われる。その接着面に接着ゴムを付けて、あらかじめトレッドパターンが刻まれたトレッドゴムを貼り付ける。そして加硫缶と呼ばれる装置の中で加硫させて台タイヤとトレッドゴムを接着させる。メリットとしてはリモールド製法よりも製造設備に必要なコストが抑えられるところだ。
リモールド製法は台タイヤの上に加硫していないトレッドゴムを巻き付ける、次にモールドと呼ばれる金型に入れて、加硫をする。このモールドに入れて加硫をするときにトレッドパターンが付けられる。メリットとしてはプレキュア製法よりもトレッドの継ぎ目が目立たず、新品タイヤのようなトレッド部の外観となる。
その後は基本的にはプレキュア製法もリモールド製法も同じだ。製品検査や耐圧検査などが行われる。
乗用車用ではコストがかかる
経済性と環境面、両方でエコなリトレッドタイヤだがトラック用や航空機用がメインで我々が普段運転するような乗用車では採用されていない。その最大の理由はコストだ。乗用車でリトレッドタイヤを行うと、経済的にはエコではなくなってしまうのだ。
ではトラック用では経済性が高いリトレッドタイヤが乗用車用ではコスト高となるのか? それはサイズ展開の問題である。乗用車用では12インチから上は22インチを超えるようなサイズまで用意されている。そのサイズは200を優に超える。それに対して、トラックバス用は小型も含めると16~22.5インチとなっていて、そのサイズは30を超える程度。乗用車用のリトレッドタイヤを用意するには設備投資が膨大となり、通常の新品タイヤと比べて価格のメリットを出すことが困難なのだ。
じつは過去には乗用車用にもリトレッドタイヤが製造されていたことがあった。再生タイヤとも呼ばれていたが、コスト的メリットがなくビジネスとして成立が難しかったため、姿を消してしまったのだろう。
リトレッドタイヤはサイズ展開が限られているトラックだからこそ可能なエコなアイテムなのだ。