この記事をまとめると
■スーパーカーブランドは近年「サーキット専用車」を多く手がけている
■ゲームの世界で展開されていたようなクルマも登場している
■登場する理由は環境対策にある
フェラーリもランボルギーニもマクラーレンも手がける
アストンマーティン・ヴァルカン、ランボルギーニ・エッセンツァSCV12、マクラーレン・ソルスGT。スーパーカーに詳しくない人には、単なる車名の羅列にしか見えないかもしれないが、この3台には共通点がある。公道を走れない、でもレーシングカーでもないサーキット専用車なのだ。
このカテゴリーのきっかけとなったのはフェラーリFXXあたりだと思われるが、なぜこのようなスーパーカーがいくつも登場しているのか。その理由のひとつに、市販車にもレーシングカーにもレギュレーションがあることも関係している。そのレギュレーションは年々厳しくなっており、制約が多くなってきていることが大きい。
マクラーレン・ソルスGTを例に取ると、このモデルはドライビングシミュレーションゲーム「グランツーリスモ」に収録されていたコンセプトカーを実車化したもの。
なによりも目立つのは、コクピットがひとり乗りで中央に置かれていることで、ボディはぐっと絞り込まれている。リヤに巨大なウイングがそびえていることも特徴。
クルマ好きなら多くが、このままでナンバーを取得するのは大変だと思うだろうし、レースに詳しい人なら、4輪がフェンダーで覆われているのでフォーミュラではなく、ひとり乗りなのでプロトタイプスポーツでもないと判断するだろう。
加えてモノコックもエンジンも専用設計で、後者は5.2リッターのV型10気筒自然吸気と、形式からして市販のマクラーレンには搭載していないものだし、ここまで大排気量の自然吸気エンジンで走れるレースのカテゴリーも、ちょっと思い浮かばない。
最高出力840馬力以上、車両重量1000kg未満というスペックに近い市販車がないわけではない。今年生産を開始したゴードン・マレー・オートモーティブT.50は、やはり1000kg未満のボディに、660馬力を発生する4リッターV12エンジンを積む。
しかしこのT.50も、公道向けの100台の生産が終了したのち、伝説のF1ドライバー、ニキ・ラウダの名を冠したサーキット専用車が25台生産される予定だという。おまけにT.50のパワーユニットはモーターを装着したマイルドハイブリッドである。
ランボルギーニがプラグインハイブリッド仕様のレヴエルトを出したことでもわかるとおり、いまやスーパーカーであっても地球環境への配慮は欠かせない。F1をはじめとするモータースポーツも同じ。とりわけスーパーカーブランドの多くはヨーロッパが本拠地なので、風当たりは強いはず。
つまりいま、スーパーカーらしいスーパーカーを作ろうと思ったら、市販車にもレーシングカーにもしないのが、もっとも理想に近づけられると言えそうだ。スーパーカーやスポーツカーにとって生きにくい時代になったことを改めて教えられるが、ソルスGTのようなポジショニングは、ひとつの回答としてアリだと思っている。