クルマを手に入れて人生を再び謳歌しようではないか
……と思ったが、さすがに高速道路では70~80km/hぐらいしか出せないのはちょっとツラい気もしてきた。いや出そうと思えば2CVでも100km/hぐらいは普通に出るのだが、そこまで出す気になれないクルマなのですよ。
であるならば――ブッソーネV6と通称される往年のV6ガソリンエンジンを搭載した「アルファロメオの中古車」でどうだ? 具体的にはアルファロメオ「156」や「GTV」、あるいは「147GTA」などである。
このブッソーネV6エンジンはフィーリングと音があまりにも素晴らしいというか官能的というか、「生の讃歌!」のようでもあるため、乗っているだけで陰鬱だった気分は完全に晴れ、軽い風邪程度であれば治ってしまう可能性もある(?)というのが、まず第1のポイントではある。
だがそれ以上に重要だと思うのは「世の中、意外となんとかなる」ということを、身をもって教えてくれるエンジンである……ということだ。
過去、私は3リッターのブッソーネV6を搭載したアルファロメオ「GTV 3.0 V6 24V」というクルマに乗っていた。そしてそのエンジンや車両本体に対しては、多くの者から「そんなのどうせすぐぶっ壊れて大変な目に遭うでしょ(笑)」と嘲笑された。
たしかに多少ぶっ壊れはしたが、本当に多少であり、ごくごくたまにのことでしかなかったのだ。故障などのせいで死にそうになったことも、修理代がかさんで死にそうになったことも、一度もない。たまに壊れても「ま、いっか(笑)」と笑って許せるサムシングが、そこにはあった。
これが意味することは、先ほど申し上げたとおり「世の中、意外となんとかなる」ということであり、それと同時に「他人のテキトーな言説や噂話など、いちいち真に受ける必要はない」ということでもある。
ブッソーネV6エンジンを搭載するアルファロメオとは、官能と感動のみならず「生きる勇気」をも与えてくれるクルマなのだ。よし、もう1度1990年代か2000年代ぐらいのアルファロメオを買おう!
……と思ったが、過去に乗っていた3リッターのブッソーネV6エンジンは、気持ちよく走ろうとするとリッター6~7kmぐらいしか走らないため、いまの困窮して絶望している私には燃料費の点で少々キツいのかもしれない。
であるならば……まずまず燃費が良くて(というか極度に悪くはなくて)、なおかつまあまあ安くて、そして気持ちよ~く走れることで陰鬱な気分が雲散霧消し、なんだかちょっと人生観も変わるようなクルマは……下記の3車種だろうか? ちなみにすべて「中古車」を想定している。
フィアット500のツインエア:0.9リッター2気筒ターボエンジンのビート感が最高である。
すべての世代のマツダ ロードスター:このクルマで風を感じながら走り、なおかつ陰鬱な気分でいられる人間が、世界中のどこにいるだろうか?
フィアット ムルティプラ:こう見えてとにかく走りがイイ。そして「ブサイクでもいいじゃねえか! 中身がすべてだぜ!」という気持ちにさせてくれる。ただし顔が変わった後期型はデザイン的に凡庸すぎて死にたくなるので、おすすめしない。
ほかにもいろいろあるのだろうが、とりあえず思い浮かんだ「絶望している私が乗るべきクルマ」あるいは「絶望しているあなたに乗ってほしいクルマ」は、以上5車種である。
そしてこの5車種について簡単なことを書いていたら、乗るまでもなく、なんだかちょっと楽しい気分になってしまった。そのため、死ぬのはやめることにした。というか、30年後ぐらいに死ぬことを、いま決意した。