バックカメラにはまだまだ課題も多い
また、夜間や悪天候時の視認性も問題だ。ほとんどの車両においてバックランプは路面や周囲を照らすのではなく、近接車両等に後退中であることを知らせる程度の光量しか持たされていない。真っ暗闇のなかではその小さな光量に反射するものしかカメラに映らず、相当低速で後退しないと映った瞬間に接触してしまいかねない。
雨天では水滴がカメラレンズ周辺に付着し、また雪道など走行後にもレンズ周辺が汚れ、後退前に拭き取らなければ使いものにならない。カメラレンズクリーナー機能を備えたモデル、使用時以外カメラレンズを格納し走行中に汚れが付着するのを回避出来るシステムを搭載したモデルもあるが、まだ稀だ。
近年は「アラウンドビューモニター」など車両周辺をモニターに映し出すシステムの搭載もブームになっている。バックカメラだけでなく、前方カメラ、サイドミラー下の側方カメラの画像をシステム内で合成し、さも車両周囲を360度見渡せているようにモニター上に表示している。
しかし、この方式も完全とは言い難い。まず車両の四つの角が死角になっていて肝心の部分が見えない。狭い路地を曲がる際に車体の角が視認できなければ意味がない。それにクルマの側面に添って立っている人は脚しか映らない。4つのカメラの視界を合成するだけでまったく実用性がない状態だ。
こうしたカメラシステムの搭載を前提として車体デザインをしていない車両では、後方視界などで死角が大きく、カメラの汚れや故障、周辺環境が悪ければ直接視認することも難しくなっている。
バックソナーと組み合わせ、音や光の点滅で障害物との距離を知らせる機能も重要だが、結局のところドライバーが直接視認しやすい車体形状や、夜間は周囲を照らす照明装置なども必要だろう。
こうした装備、システムを完全に機能させられなければ自動運転など到底無理だろう。
クルマの周辺状況を100%正確にドライバーに認知させ、適切な操作に反映させる機能が自動運転以前にいますぐに求められているのだ。