軽量モデルならではのフットワークを活かして林道を攻略
Rally4仕様車は国際規定モデルとはいえ、前述のとおり、エンジン排気量は1200ccに過ぎず、改造範囲も狭いことから、「トヨタGRヤリスRally2」や「シュコダ・ファビアRally2」、「シュコダ・ファビアR5」といった1600ccエンジンを搭載した4WDモデルのR5/Rally2仕様車やVAB型WRXをベースに開発された2000ccのターボエンジン搭載の「スバルWRXラリーチャレンジ」と比べるとパフォーマンス不足は否めない。
「同じRally2でもルノー・クリオのほうがエンジンのパワー感があるんですけど、きちんとセッティングを出さないと走れない。その点、プジョー208はパワー感がないけれど、本当に乗りやすいので、ドライバーのほうでアジャストできます」と新井はポジティブにインプレッションしていたが、格上のマシンと同じ土俵で戦うことは厳しかったことだろう。
それでも新井×208 Rally4は新城ラリーおよびツール・ド・九州で素晴らしい走りを披露した。まさに、『ジャイアント・キリング』と呼ぶに相応しい活躍だが、その原動力となったものが、208 Rally4のライトウエイトにほかならない。エンジンパワーはないものの、軽量モデルならではのフットワークを活かして日本の林道を攻略。同時に新井は丁寧なドライビングをおこなっていたが、このロスを減らした新井のスキルも賞賛に値するだろう。
こうして第2戦の新城ラリーと第3戦のツール・ド・九州で目覚ましい飛躍を遂げた新井×208 Rally4は第5戦のラリー丹後、第8戦のラリーハイランドマスターズに参戦する予定。新井によれば「もともとグラベルのキットを用意していないので、ターマックに絞って参戦します。久万高原ラリーはマシンのメンテナンスのためにスキップしますが、残りのターマックでは昔のF2キットカーのように、はまれば勝てる……というところを見せたい」とのことだ。
1999年のWRCでF2キットカーのシトロエン・クサラが猛威を発揮。FFモデルながら4WDのWRカーを抑えて、フィリップ・ブガルスキーがラリー・カタルニア(スペイン)とツール・ド・コルス(フランス)で2連勝を果たしたが、果たして新井×208 Rally4もブガルスキー×クサラのように、下剋上を成し遂げることができるのか? 新井×208 Rally4の挑戦に注目したい。
なお、ツール・ド・九州では、シュコダ・ファビアR5を駆るヘイッキ・コバライネンが2連勝を達成。トヨタGRヤリスRally2を駆る勝田範彦が2位入賞を果たしており、GRヤリスRally2で初の表彰台を獲得している。