もはや世の中ハイブリッド車だらけ! それでもあえて「プリウス」を選ぶべき理由とは? (2/2ページ)

輸入車から新型プリウスに乗り替える人も

 ハイブリッドが備える付加価値の筆頭は、モーター駆動によって瞬発力が高く、加速は滑らかでノイズも小さいことだ。そこで現行プリウスは、1.8リッターエンジンをベーシックなXと定額制カーリースのKINTO専用にして、一般ユーザーが購入するグレードは排気量を2リッターに拡大した。エンジンとモーターの駆動力を組み合わせたシステム最高出力は、1.8リッターは140馬力だが、2リッターは196馬力と強力だ。

 2リッターエンジンの上級グレードでは、モーターの併用による走りの良さをさらに向上させ、ボディ剛性や足まわりも熟成させた。走行安定性や操舵感を高めている。その表現として、ピラーとウインドウを寝かせ、外観をスポーティに仕上げたわけだ。

 ただし前後席ともに、乗降性は従来型に比べて悪化した。後席の閉鎖感も強まり、後方視界も悪くなっている。速さに結び付くカッコ良さは強まったが、実用性は低下した。購入時には、後席の居住性と、車庫入れや縦列駐車を確認したい。

 このようなフルモデルチェンジを行うと、従来型プリウスの実用性、燃費、価格の割安度に魅力を感じていたユーザーは、現行型を買わない可能性も高まる。

 その一方で、5ドアクーペ風の車種が欲しいユーザーは、現行プリウスに新たな魅力を感じる場合もある。今はかつてのカリーナEDに相当する外観を重視した4ドア、5ドアモデルが存在せず、現行プリウスはそこに収まるからだ。販売店では「納期が長いためにお客様の注文に十分に応じられないが、従来型からの乗り替えに加えて、トヨタ車以外の需要もある。フォルクスワーゲンなどの輸入車から乗り替えるお客様もいる」としている。

 現行プリウスの売れ行きは、ハイブリッドのニーズがさまざまな車種に分散されたから、3代目のように1カ月平均で2万台以上を登録するのは難しい。それでも2022年における1カ月平均の2700台以上は販売され、2024年頃には、1カ月平均で3500台前後に落ち着くだろう。発表時の月販基準台数は4300台で、これを長期的に達成するのは難しいが、堅調に売れ続ける。

 以上のように現行型と今後のプリウスは、ハイブリッドの付加価値を追求するスペシャルティカーとして進化する。そして2リッターエンジンのハイブリッドは、ポート噴射と直接噴射を併せ持つ凝ったメカニズムを備える割に、価格は割安だ。今後のトヨタのハイブリッドは、この2リッターエンジンを主力にして、低燃費と併せて走りの良さも追求する。それは急増していく電気自動車への対抗策にもなるわけだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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