北極から南極へ約2万7000kmをクルマで走破!? しかもEVのアリアで挑む冒険を日産が行う意味とは? (2/2ページ)

13年の実績を持つ日産がEVでの優位性を証明する

 また、日産は常にアクセル全開で走行することの多いフォーミュラEへも参戦しており、超高速域でのEV性能も試している。

 2010年の初代リーフ発売から13年の歳月を経て、日産はEVのあらゆる可能性を探り続けている。単にクルマとしての性能に止まらず、廃車後のリチウムイオンバッテリーの再利用といった資源の有効活用も試行錯誤し、事業化にこぎつけている。世界的に見ても、ここまでの多様な実績を持つ自動車メーカーはない。

 米国テスラといえども、太陽光と蓄電池の取り組みはしていても、EV後の再利用には手を付けていない。欧州メーカーも、試作車などのバッテリーを試験的に再利用した実証などに止まる状態だ。

 駐車中のEVを活用したヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)でも日産は実績を積んでいる。同じくEVを販売し続ける三菱自動車工業もVtoHやVtoLを手がけているが、欧米の自動車メーカーはまだ十分な活用へ踏み切れていないのが実態だ。充電方式の違いも影響していそうだ。

 世のなかはEVの一充電走行距離の長短に注目しているが、じつはEVのあるべき姿はそれだけでない。単に走行距離を競うだけなら、エンジン車の代替としての価値しか見ていないことになる。EVがエンジン車と違うのは、バッテリーという資源の社会への有効活用を含めた次世代社会の構成要素になる点にある。

 今回のアリアでの挑戦にはしかし、懸念材料もある。この挑戦を北極から南極へと題しているが、北極点は海の上だ。なぜそこが出発点となり得るのかという実証が無い。貴重な挑戦であるなら、表現は的確であるべきだ。ごまかしや嘘が含まれてはならない。言葉を正しく使わなければ、挑戦そのものの実証が疑われかねないのである。的確な言葉遣いと、適正な情報発信が望まれる。

※4月20日追記:出発点について日産より以下の発表がなされています。

チームは安全に出発できる場所を選び、1823年時点の北磁極*にあたる地点から出発しました。
*座標: N70 38′ 37.820″, W98 28′ 0.541″


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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