実店舗がなくなることはないだろう
メーカー系新車ディーラーが全廃になることはないだろう。ただ、働き手不足もあり対面販売には限界が出てきており、オンライン販売はある意味サービス向上のために広がりを見せていきそうである。事実、店頭にはなかなか足を向けることのでないお客をオンライン販売で誘致することができているようである。いまは納期遅延が深刻なので、「実車を試乗してから」などと悠長なこともいっていられないケースも多いが、「どうしても試乗して購入したい」というお客もいるので、そのようなひとはメーカー系新車ディーラーで新車を購入することになるだろう(今後もディーラーに試乗車があるという前提)。郊外で広大な敷地を持つ量販店ならば、敷地内での試乗も十分可能だ。ただし、新車でも中古車販売でも試乗しなければ購入できないというお客は結論まで時間がかかるとして、敬遠され後回しにされることが多いと聞いている。
現状でも軽自動車では金利の関係から現金購入のひとは届け出済未使用軽中古車専業店(中古車扱いになるので金利が高いケースが多い)、残価設定ローン(金利は低め)で購入したいひとはメーカー系正規ディーラーでと、棲み分けができている。
ただ一定金額以上の車両はやはりメーカー系正規ディーラー店頭などにおける対面販売が主流となるだろう。つまり、将来的にメーカー系正規ディーラーはその規模を縮小しながら、点検・整備あるいは物販の窓口業務を強化し、高額車両を中心に扱うところ以外は新車販売はオマケ程度になるのではないかと筆者は考えている。航空券購入などで、オペレーターを通じて購入すれば、ネット購入の料金に対して窓口手数料を余分に取られるといったこともあるが、新車販売でも今後起こってくるかもしれない。
韓国ではすでに新車販売の中心はオンライン販売となっている。そもそも韓国の新車ディーラーは販売に特化し、整備窓口は別にして設けていなかったことが功を奏していたのかもしれない。日本ではオンライン販売でもどうしても店舗に足を運ばなければならないのが現状となっているが、今後さらに現場の働き手不足は改善どころか深刻になることが予測できるので、法改正なども伴いオンライン販売の比重は高めざるを得ないといえるだろう。現状でも一軒あたりの商談に時間がかかると効率が悪いと指導されるそうだ。
オンライン販売先進国のアメリカでは、いまのところ人間が窓口になっているようだが、これはビッグデータを収集するためともされ、対話型AIが話題になるいまでは、窓口を完全AI化するのも時間の問題ではないかとされている。これならディーラーは大幅に人件費を削ることもできるのである。それでもディーラーでという人向けには、ショールームにスーパーのセルフレジのようなものを設けて自ら入力などをしてもらい、説明要員を1名ぐらいおけば済むことになるだろう。とにかく、いまより人の手がかかる業務を減らしていかないと、日本では新車ディーラーという業態自体が今後成り立たないといってもいい状況になっているのである。
新車販売による利益がほぼ期待できないなか、メーカー系正規ディーラーも生き残る術として、脱新車販売という道を選ばなくてはならないだろうし、すでにそのような話は出てきている。事実メーカーからは新車販売に頼らない利益追求というものがディーラーに求められているとも聞いている。