メーターが「コクピット」の雰囲気を演出
油圧は、オイルポンプから出た直後の位置にセンサーを設けるのが最善と考えられ、電圧計は、電気がバッテリーのプラス端子からマイナス端子に流れる間の回路に設置される例がふつうだが、電圧計の場合、イグニションをON、またはACCポジションにしている場合はバッテリー電圧、エンジンが始動している間はオルタネーターの発電電圧を示すことになる。電気の場合は機械的な動きが介在しないため検知精度は非常に高く(というより通電状態そのもの)、油圧の場合も検知単位が0.1kg/cm2レベルを問題なくギャランティしているため、やはり信頼に足る情報表示と言ってよい。
電流計は、0を中点にプラス側とマイナス側に指針が触れる設定で、プラス側に振れている状態は充電状態、マイナス側に振れている場合は放電状態であることを示している。大電力(電流×電圧)を消費する電装品を装備している場合は、バッテリーの状態を管理できる表示計として活用されている。
ブースト計は、タービンで過給された吸入気をサージタンク近辺でその圧力を検知、ターボの過給状態を表示するメーターだが、市販車両のターボ過給設定環境では、過給状態を知ることはできるが、そのこと自体にそれほどの意味はないと思われる。実際、市販ターボ車でブースト計を装着している車両はほとんどないはずだ。高過給の競技車両では不可欠な装備のひとつかもしれないが、市販車でその必要性は低いと言えるだろう。
ブースト計以上に、車両性能の維持や保守の活用にはつながらないと思われる表示機能が、4輪駆動車の駆動力配分表示だろう。たとえばGT-RのアテーサE-TS機構には、フロントへのトルク配分を示すデジタルディスプレイが設けられている。基本はFR、必要に応じて前輪に駆動力を伝える4WD方式だが、その際、前輪への駆動力伝達調整を行っているのが電子制御によるマルチプレートクラッチだ。そのクラッチの圧着力を検出してFRから4WDへの駆動バランスの変化を表示している。
電子制御クラッチの信号を使って表示するシステムであるだけに、表示内容の精度は非常に高いが、瞬時に連続可変的に変化するGT-Rの前輪駆動力を、運転中に常時確認するのは不可能と言ってよいだろう。おそらく、前方への注意力が散漫となり、走行速度にもよるがコースアウト(?)の可能性すらある。
こうした各種表示機能(メーター)は、現代の自動車の完成水準から見れば、とくになくても済む機能かもしれず、異常発生時に点灯するインジケーター機能でも十分事足りるとも判断もできるが、逆に、複数のメーターが装備されることで、運転席ではなく「コクピット」という雰囲気が演出され、ドライビングの醍醐味が増す効果があることも事実。こうした意味では、走行中に絶えず状態が変化する「ブースト計」や「駆動力配分表示機能」などは、構造的に装着できる車両は限られてしまうが、ドライビングアイテムとして高い付加価値を持つ装備、と言えるのかもしれない。