車両の統一化でコストは下がるも不自由さは増す?
グローバル化の影響は車名や価格だけでなく、車体寸法に顕著に表れている。ことに衝突安全基準が世界的に高まることによる大型化だ。日本では5ナンバー車と3ナンバー車という区別があり、過去、5ナンバー車を主体に道路や駐車枠が決められてきた。このため、側面衝突安全を含め、外観の格好よさを求め、また操縦安定性向上のため、車幅が広くなったことでの不便は大きい。
道幅がそれほど広くない欧州でも、日本と同様に車幅に不便があるように思うのだが、路上駐車が許される欧州では、車幅より全長を気にする傾向にあるという。現行のルノー・ルーテシアは、あえて新車で全長を縮めてきた。
このように地域によって交通事情は異なり、グローバルカーではどこかにそれぞれ不自由な点が生じているはずだ。
背景にあるのは、人口増だろう。1900年に16億人だった世界人口が、いまは80億人に達している。それらの人々が職を得て給料を手にし暮らしていくには、企業が規模を大きくしていくしかない。自動車メーカーであれば、より多くの新車を販売しなければならず、結果、国内専用車や地域専用車では、なかなか採算に合わないということだろう。
最終的には、車名のバッジという部品にも及ぶはずだ。車名が違えば部品点数がひとつ増える。そして、クルマに愛着を持つことが難しくなり、所有から利用の時代へ移ろうとしている。車名への愛着も、移動手段としての価値というクルマの存続の前に薄れていくことになる。
そうしたなか、たとえばポルシェは「買ってもらうブランドから選んでもらうブランド」への転換をはかろうとしている。ポルシェのような知名度の高いクルマであっても、時代の変化に適合しなければ生き残れないということではないか。
クルマの価値は、今後さらに変化していくはずだ。そこでどう生き残るかは、車名にとどまらず、企業価値の有無も問われていくことになる。