リアル運転席とダミー運転席のダブルキャノピー
そして、インテリアについても、これまたジウジアーロお馴染みのデザインワークが目白押し。アッソ・デ・フィオーリ、つまりピアッツァで世界中を驚かせたインパネのサテライトレイアウトや、複座コクピットを踏襲したかのような助手席の眺め、あるいは乗員同士の会話をインカムで行う設定をロードカーに採用したのもジウジアーロらしいギミックといえそうです。
イタルデザインが作るコンセプトモデルは実際に走れるものが少なくありません。ジウジアーロ氏は17歳にしてフィアットに入社して、クルマ作りを根底から叩き込まれているため、走れることはもちろん、生産上の観点やコストといったことにも手抜かりがないためです。
アズテックも走れるどころか限定ながら市販車として路上を走ることが前提で製作されています。前述の創業パートナーである宮川氏とともにプランしたもので、当初は50台限定、1億円という価格設定、トリノショーで予約受付といった計画だったようです。が、生産されたのは半数の25台で、そのうち2台が日本に上陸しています。
また、セールスプロモーションの一環として、モナコGPでデモ走行をしてみせたことも話題となりました。ナンバーをつけて公道を走っている現存車も少なくないようで、動画サイトではわりと勇ましいエンジン音が聞けるはずです。
アズテックのボディは主にアルミで、部分的にカーボンやコンポジット素材が用いられています。リヤタイヤハウス前のモニターやスイッチ類は残念ながらダミーで、機能はもたらされていません。最高速は240km/hとも250km/hともいわれますが、250馬力で約1.5トンのボディですから、戦闘機のようにはいかなかったことでしょう。
シャシーに目を向けるとランチア・デルタ・インテグラーレの駆動系が用いられ、エンジンはアウディの2.2リッター5気筒ターボを横置きミッドシップという構成で、いずれもイタルデザインと結びつきの強いメイクスとの協業だとわかります。
こうしたコラボもまた、日本の自動車殿堂入りしている宮川氏の顔の広さ、ジウジアーロ氏への信頼がなしえた偉業にほかなりません。このふたりのエピソードはクルマ好きには胸アツなので、ご興味ある方はぜひ検索してみてください。きっと、アズテックが別の意味で輝いてみえること請け合いです。