セダンにリヤワイパー装着車が少ない理由とは？

この記事をまとめると
■セダンにはリヤワイパー装着車が少ない
■理由は雨天走行時も後方視界が妨げられにくいから
■スバル車にリヤワイパー装着車が多いのは降雪地帯で支持されているため

3BOXと2BOXでリヤウインドウの濡れ方は異なる！

　セダンには、なぜリヤワイパー装着車が少ないのか？　分かっていそうで、その実なぜなのか、深くその理由を把握していないテーマを編集部から投げかけられた。セダン型ボディ、つまり3BOXフォルムのことだが、この形は、近代自動車史のなかで乗用車の基本形となってきたボディフォルムである。そのセダンのリヤウインドウには、基本的にワイパーが装備されることはなかった。なぜだろうか？

　そもそも、日本車で初めてリヤワイパーを装着したクルマは何だったのか？　時代をさかのぼってみると、1972年に登場した初代シビック（SB1型）にたどりつく。日本車初の本格FF 2BOXカーとして注目を集めたモデルだったが、すぐに開閉式リヤゲートを持つ3ドア仕様車が追加され、そのときリヤウインドウにワイパーが装着されていた。

　3BOXセダンでは、長い間リヤワイパーについて考慮されなかったが、2BOXフォルムが実用化されたとたん、そのリヤウインドウにはワイパーが装着されることになった。考えられる理由はひとつ、雨天時のリヤウインドウの濡れ方、汚れ方が、3BOXと2BOXで違うということである。言い換えれば、雨天走行時の後方視界が、3BOXの場合にはそれなりに確保される状態にあるが、2BOXの場合は雨滴や後輪が路面から巻き上げた雨水がリヤウインドウに付着し、後方視界の妨げとなるケースが起きているということだ。

　両者の違いは、言うまでもなく車両後部の形状にあり、ルーフエンドからリヤウインドウを介してトランクリッドを持つ3BOXに対し、ルーフ後端がそのままボディ後端となっているのが2BOXだ。つまり、2BOXのリヤウインドウはボディ後面パネルの一部を形成する状態になっている。もちろん、リヤウインドウ自体の形状も、傾斜角を持ち、ボディデザインに合わせて左右にラウンドした3BOXと、ほぼ平面ガラスに近い形状で車体後部に垂直に取り付けられた2BOXで大きく異なっている。また、走行速度域によっても異なるが、空気流の影響で表面に付着した雨滴、雨水が流れやすい3BOXと、車体後部で巻き上げた路面の雨水が付着しやすい2BOXという違いもある。

　初代シビックでリヤワイパーが装備化されて以来、どのメーカーもリヤワイパーの働きや必要性は十分以上に検討されたはずだが、結果的に3BOXで装備される例が皆無だったということは、3BOX車のリヤウインドウには後方視界確保のためのワイパーは必要がない、という判断が下されたことを意味している。ちなみに、スバル車にはリヤワイパーを装備する3BOXモデルが多いが、これは雨天というよりスバルの特徴である4輪駆動方式が降雪地帯で支持され、リヤワイパーは降雪を考慮した上での装備と考えられる。

　それから経験的な印象だが、雨天時のリヤワイパーは連続作動ではなく、間欠モードでの作動が合っているようだ。リヤウインドウへの降雨（雨滴の付着）状態にもよるが、雨滴に向かって進んでいくかたちのフロントウインドウとは逆に、リヤウインドウは降雨から逃げていくかたちとなる。ワイパーによって拭き払う排水量が絶対的に少なく、ワイパーを連続作動させると水膜切れを起こし、リヤウインドウとワイパーブレードが直に接して引っ掛かる動きを起こしがちである。リヤワイパーの間欠モードは必要不可欠だが、理想を言えば、間欠タイムも長短2〜3パターン、あるいは連続可変式となればありがたい。