トレンドを先取りしすぎでいまだ時代が追いついていない
そんなユニークなホンダのコンセプトモデルにおける、ある意味での最高傑作といえるインパクトを持つのが、1999年 第33回 東京モーターショーに出展された「不夜城」かもしれません。
こちらのコンセプトモデル、名前もユニークですが、スタイルも独特すぎるもの。全長3050mmと軽自動車より短いボディですが、全幅は1650mmと小型車並みのサイズ感。しかし、後ろヒンジのドアを開けると、その短いボディの中に4つのシートが備わっていることがわかります。
そのシートは、カウンターチェアのように座面は高くなっているのが特徴。「セミスタンディングシート」と名付けられたことからもわかるように、軽く腰かけて移動するといったイメージとなっています。衝突安全思想からするとNGな座らせ方かもしれませんが、完全自動運転のコミューターと考えれば、合理的なパッケージ。時代を先取りしすぎていたコンセプトモデルといえます。だからこそ、「不夜城」については定期的にリスペクトされる記事が登場しているのでしょう。
ここまで紹介してきたコンセプトモデルに比べればいくぶん大人しいスタイルですが、ミニバンの新提案として注目を集めたのが「SKYDECK(スカイデッキ)」です。
2009年の第41回 東京モーターショーに出展されたコンセプトモデルで、ハイブリッドカーの可能性を広げる、6シーターの低床ミニバンというのが、そのプロフィール。
フロントがバタフライドア、リヤがスライドドアでBピラーがない大開口というデザインは、ドアを開けたときにキャビンの見栄えを考慮したものでしょうが、そこから覗くことのできたシートレイアウトはとにかくユニークなものでした。
2列目シートは1列目シートの下にスライドするようにして格納でき、3列目シートは床下にダイブダウンして格納することが可能。このあたりホンダが量産車で培ってきた低床設計のノウハウが存分に生かせているという印象です。さらに全面ガラスルーフとしたことで、どの席においても開放感は抜群。ミニバンの新しいスタイルとして期待が高まるものでした。
筆者個人としては、2列目シートのユニークなスライドや3列目でも開放感が感じられるガラスルーフといったアイディアは、のちに市販車「ジェイド」につながったと感じています。具体的には、ジェイドの3列仕様に採用された2列目のV字スライド、3列目用のエクストラウインドウといった要素が、それにあたります。
とはいえ、日本市場においてはジェイドが商業的には成功したとはいえません。大いに話題となったユニークなコンセプトモデルであっても、その要素を量産に展開したときに、ユーザーが受け入れるとは限らないかもしれません。