シルビアには幻のロータリー搭載計画があった! オイルショックに阻まれた残念すぎるプラン (2/2ページ)

燃費の悪さがロータリーシルビアの誕生を阻んだ

 ロータリーエンジンの排出ガス対策として用いられたサーマルリアクターは、燃焼後に排出される炭化水素(HC)を、排気ポートのあとに設けた再燃焼室に新鮮な空気を送り込むことにより、燃え残ったHCと一酸化炭素(CO)を燃やし、無害化する仕組みである。もうひとつの有害成分である窒素酸化物(NOx)は、ロータリーエンジンの燃焼温度が低いため、後処理しなくても排出量は少なかった。

 ところが、HCの排出量が多いということは、燃費の悪さを示している。HCとはガソリンの成分で、つまり、エンジンに供給されたガソリンが燃え切らないため排気に多く含まれ、これを後処理で燃やしているわけだ。

 ロータリーエンジンはレシプロエンジンと違い、ローターがハウジングの内側を回転し、それにともない燃焼室が移動していくので、燃焼室温度が低くなりがちでガソリンが燃えきらない。燃焼室の形状自体も、レシプロエンジンのような円形ではなく、矩形(長方形)のため、点火プラグの炎が燃焼室の角まで伝播しにくいことも関わっているだろう。

 排出ガス浄化に目途のついたロータリーエンジンだったが、燃費の悪さは石油危機後の世界にとって見逃せない弱点となった。そして2代目シルビアも、ロータリーエンジンを諦め、レシプロエンジンで1975年の発売となった。このレシプロエンジンは、NAPS(日産・アンチ・ポリューション・システム:日産・公害・防止・システム)といって、酸化触媒とEGRなどを駆使した浄化装置を採用している。

 ちなみに、ロータリーエンジン車を発売し続けたマツダは、サーマルリアクターに送風する新鮮な空気を温めることにより燃費を4割改善するなどを含め、さらに細かな改良を重ねていくことになる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
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乗馬、読書
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池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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