この記事をまとめると
■かつて「コーナリングマシン」と言われるクルマが存在した
■しかし現在そのような表現は聞かなくなった
■「コーナリングマシン」が消えた理由について解説
「コーナリングマシン」という表現が使われなくなった
1990年代後半あたりをきっかけに、乗用車の基本型が変化を遂げてきた。長い間、乗用車の基本は3BOXセダンと考えられてきたが、いわゆる需要の核となるファミリカーの概念が、スペースユーティリティに優れた「ミニバン」にシフトしてきたからである。その結果、3BOXセダン、あるいは主にヤング層を狙った2BOXカーは徐々に数を減らし、それに伴いモデルバリエーションも少なく抑えられるようになっていた。
ミニバンは、車両としての占有面積(全長×全幅)は同排気量クラスの3BOXセダンと変わらないが、ボディ後端までをキャビンとして使い、さらに全高を伸ばすことでスペースユーティリティは圧倒的に勝る形態だった。このミニバンをファミリカーとして捉えた場合、乗車人員の数、あるいは荷物の搭載量、さらには1人あたりの居住スペース、着座姿勢などを考えると、3BOXセダン離れが起こるのは当然の結果だった。
一方、車両重量、重量配分、重心位置など自動車としての運動性能を考えると、この点では3BOXセダン、あるいは2BOXカーに対して不利な条件にあった。要するにミニバンは、広いキャビンスペースを持ち、多人数が快適に移動できる乗用車であることが、その基本コンセプトとなっていた。
逆に言えば、運動性能、動力性能を生かした走りを求めるなら、従来型の3BOXセダンや2BOXカーのほうに適正はあり、これらの車両形態をベースに「走りのモデル」が企画されることになる。
さて、編集部から投げ掛けられたテーマは「最近、なぜハンドリングマシンと呼ばれるモデルが見られなくなったのか?」というもので、ハンドリングマシンとは、まさにその名のとおりの車両で、優れたハンドリング性能を持ち、卓越した運動性能を持つ車両を指す言葉と理解してよいものだ。たしかに、最近ハンドリングマシンという表現は使われなくなったが、それがなぜなのか、ここで考えてみたいと思う。
まず、先に振れたように、運動性能に優れた車両を作り上げる土台となる3BOXセダン、2BOXカーの絶対数が少なくなったことが挙げられるだろう。自動車メーカーも、採算を度外視した製品作りは行えない。とすると、3BOXセダンも2BOXカーも、本来その形態が特徴とする性格の商品企画を主体とせざるを得ない。たしかに、優れたハンドリング性能を持ち、ドライバーの意のままにキビキビと走る車両には大きな魅力を感じるが、では、3BOXセダンや2BOXを求めるユーザー層に、突出したレベルの優れたハンドリング性能がどの程度セールスポイントになるかを考えたとき、対象となるのはごく一部のユーザー層という結論に落ち着いてしまう。商品企画が成り立ちにくいのだ。