2位じゃダメな理由はなに? 自動車メーカーが「販売台数No1」を意地でも獲得したい事情 (2/2ページ)

売れまくってるほうがユーザーの安心度が高い

 このほか日産も「販売ナンバーワン」が好きだ。

 2022年はノートとノートオーラを合計して「電動車販売ナンバーワン」になったと宣伝している。日産は過去に、先代ノートについて「2016年度下半期国内販売でコンパクトセグメント1位を獲得」とわかりにくい宣伝をしたことがある。当時の国内販売1位は先代プリウスだったが、日産はe-POWERで弾みを付けたノートを1位にしたかった。そこで「下半期のコンパクトセグメント」という条件付きの1位を宣伝した。

 このほかリーフの「EV販売ナンバーワン」もあり、「それは当たり前でしょう」という感じだった。このように販売ナンバーワンは「行列のできる○○」と一緒で、商品力をアピールできて話題作りにもなる。
また他人と一緒の商品を選ぶと安心できる、逆に個性を表現するとイジメられる? という感覚もありそうだ。

 かつてダイハツにムーヴラテという、背の高いボディに可愛いフロントマスクを備える軽自動車があった。発売された2004年頃は、ハイトワゴンが今ほど多くなかったから、開発者に「なぜ女性向けの可愛い顔を背の高い軽自動車に組み合わせたのですか?」と尋ねた。

 返答は「今は背が高いほうが、お客様(軽自動車ユーザー)同士でコミュニケーションを図りやすい」であった。意味がわからず改めて尋ねると、周囲の人達が背の高い軽自動車を使っている場合、自分だけが背の低い車種だと、コミュニケーションを図りにくい、つまり周囲との摩擦が生じやすいという話だった。

 ただし当時のダイハツには、背の低いミラジーノもあった。そこを尋ねると「ミラジーノには仕事をしている女性のお客様が多い。CMの効果で、学校の先生に人気が高く、個性的なクルマに乗っても摩擦が生じにくい」と返答された。

 他人の目など気にせず、好きなクルマに乗ることのできる世の中になって欲しいと思う。「販売ナンバーワン」の宣伝は、ちょっと悲しくて、空しい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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