「コンシューマーリポート」のテスト結果にメーカーは恐怖する
それゆえ、CRのワーストリストにランクインするというのは、アメリカで売れなくなることと等しいもの。現に、ランクインしたクルマがディスコン(生産中止)に追い込まれたことは一度や二度ではないのです。また、1996年にはいすゞのビッグホーン(北米ではトルーパー)がCRでのテスト走行中にスリップからロールオーバー(横転)という事故があった際、「Not Acceptable(受け入れ不可)」と結論づけられました。対して、トルーパーの命運がかかっているいすゞは、テスト内容に意義を申し立て裁判にもつれ込んだほど。メーカーにとって、CRはある種の脅威といっても差し支えないでしょう。
そんな視点から、2022年のスバル・アセント(アメリカ向けSUV)と2023年の日産セントラがワーストリストに入ったことを眺めてみると、両車ともリコールが発生していたことがわかりました。なかでも、アセントのリコールは重大なもので、スバルの対応は「新車に交換」という大胆な措置。もっとも、リコールが指定されたのは10台に満たないもので、新車と交換されたのは9台だったとのこと。また、セントラにしても軽微な支障で、よその国でいえば「日常茶飯事」的なリコール。ですが、CRはこれを重く見たようです。ワースト入りしている他車のほとんどが似たようなリコールが報じられています。
リコールの捉え方は各自まちまちかと思いますが、こと筆者の場合は、「じゃ、ディーラーで直してもらおう」と考え、さほど深刻には捉えません。むしろ、リコールを隠されるほうが問題なわけですからね。一方、CRは深刻に捉える派なわけで、すると400万人の定期購読者、そして700万人のウェブ読者の大半が「深刻派」と見ることができそうです。こうした「大事をとる」姿勢こそCRが支持される所以かもしれません。
たしかにクルマは安い買い物ではないし、耐久消費財、すなわち買い替えを伴う商品ですから、信頼性や耐久性、ひいてはリセールバリューに気を配るのも当然かと。そんな消費者マインドを上手にキャッチアップしたのがCRなわけで、リコールがたったひとつでも発生したらワースト候補というのも致し方ないのかもしれません。
情報化社会といわれて久しいものですが、CRのようなメディアのおかげでクルマを買うのにも失敗することが少なくなった気がします。一方で、昔のような「一か八か」でそのクルマに賭けるような買い物が懐かしく思えるのは決して筆者だけではないでしょう。
もっとも、「急にブレーキ抜けちゃう恐れあり」とか「アイドリング中に火災の可能性大いにあり」なんてのはしっかりリコールで知らせてもらいたいですがね(笑)。