6代目でSUVへと転身して起死回生を図りたいエスパス
その2年後の1996年に登場したエスパス IIIも、モノコックの骨格にファイバー樹脂製パネルで軽量化と低重心を確保するという基本の成り立ちは一緒。リヤウイングを兼ねた前後2分割のルーフキャリアまで備え、フェイズ2では直噴ディーゼルにも対応して、名作となった。
しかし、2002年のエスパス IV以降、ルノーはマトラではなくノルマンディ地方のサンドゥーヴィル工場での自社生産を決め、マトラはピニンファリーナ傘下となって市販車の生産から撤退。エスパス IVはそれでもミニバンブームの最後を飾り、エスパス IIIを超える生産台数を記録したが、次第にSUVブームに押されていった。
ちなみにエスパス計画にのってこなかったプジョーはスポーティなイメージで成功したゆえ、逆にモノスペースのブームには乗り遅れてグループ内でシトロエン任せにしていたが、初代5008を2009年にようやく投入。
エスパス IVはフルモデルチェンジのタイミングを逃したといわれつつも、日産と共通のCMF-C / Dプラットフォームを利して2014年にエスパス Vへと切り替わった。その3年後の2017年、プジョーがモノスペースとしては1代こっきりで次世代5008をさっさとSUVに切り替えたのとは対照的だった。
エスパス Vの生産台数は、36万台、37万台を超えていたIII、IV世代と比べるとぐっと少ない10万台ほどだから、販売面ではふるわなかった。いかにSUVブームがモノスペースミニバンに対してえげつない下方圧力だったか窺い知れる。
そして次なるエスパス VIはスペインのパレンシア工場で生産され、オーストラルやキャシュカイ III(エクストレイルの欧州名)とプラットフォームは共通。いち時代を画した名車の顛末としては少し寂しい気もするが、試乗してみたら、また印象は異なるのかもしれない。
ところで同じくSUVブームの逆境で13年も生き残った日産エルグランドは、今年8月にモデルチェンジがウワサされている。ルノーE-TECHハイブリッドと日産e-パワーの選択肢化を前提に、エスパスと日欧それぞれ生産の兄弟車になって、日本ではエルグランド/ニュープレーリー兄弟としてアルヴェルに対抗してみたら、面白かったかもしれない。
でも元々、エルグランドがホーミーやいすゞに連なる流れの車種だったし、北米でクエストを喰われる&ルノー進出の可能性もゼロではなかっただろうし、何よりルノーと日産が互いのモノスペース車種の共有は、カングー/NV200以外では、あまり気にかけなかったのかもしれない。