この記事をまとめると
■時間帯によって中央車線の位置が移動する仕組みをリバーシブルレーンという
■朝夕などのクルマが集中する時間帯に車線を増やすことで渋滞を軽減する効果が期待される
■混雑区間で取り入れるだけでなく、その前後の区間の適切な右左折車線の明示なども望まれる
混雑区間での導入だけでなく前後区間との連携こそキモ
リバーシブルレーンとは、道路の中央車線の位置が時間帯等によって移動し、上りと下りの交通量を調整する仕組みだ。たとえば、交通ラッシュとなる時間帯に合わせて混雑する方の車線を増やし、クルマの流れをよくしようという施策である。
じつは拙宅近くにもこれを実施している区間がある。通常は、片側1車線しかない都道だが、朝のラッシュ時間帯は上り車線で渋滞が起こるため、リバーシブルレーンが設定されている。
もともと片側1車線の道路なので、1車線の幅はそれほど広くない。リバーシブルレーンの区間は、上り側を朝の時間帯だけ2車線とし、下り側は車線の幅を狭めて左へ寄せている。切り替えの実施方法は、通常の中央車線の白線のほかに車幅を広げるためのキャッツアイが設置されており、2車線とする際にはそのキャッツアイを点灯し、下り車線側の幅を狭めている。同時に、道路の上にある看板が可変式となっていて、中央車線が移行した時間帯は、その看板でも上りが2車線になることを知らせている。
これによって、混雑する時間帯の上りは車線が増えるのだが、その先の交差点で右寄りの車線は直進と右折が重なるため、結局、直進したいクルマは再び左側の車線へ移動しなければならず、あえて2車線化した効果は薄れがちだ。また、左の車線は交差点で横断歩道の信号と時差が設けられていないので、横断する歩行者を待つ左折車で停滞気味になり、直進車を上手に流せずにいる。
つまり、リバーシブルレーンによって、混雑する時間帯にあわせて車線を増やす措置は、その先の右左折や信号との連携がなければ、効果が上がりにくいということだ。
車線の増減は、高速道路などでも頻繁に行われる。混雑しやすい区間だけ車線を増やす取り組みがなされても、その先で車線が減少し元の車線数に戻るとき、やはり渋滞が起こりやすくなっている。
交通集中による渋滞は、人口の密集する大都市での解消が難しい。そこで、車線が増えたり減ったりということが場当たり的に行われる。だが、それより運転者が先々の進路を決めやすくする表示を明確に示し、車線変更を増減させず維持する方が適切なのではないか。拙宅の近くのリバーシブルレーンについても、臨時に車線を増やしたり戻したりするより、先々の右左折の様子を運転者にきちんと知らせる道路案内が手前からあるとか、歩行者とクルマの信号に時差を設け左折が滞ることなく直進車を流すようにするとかといった、現場の実情にあった方策を採るべきではないかと常々思っている。
そのうえで、たとえば米国で実施されているように、交差点で右折車(右側通行の米国では左折車)をまず先に進ませ、そのあと直進と左折を青信号にして進ませるなど、交通の現場の実情にそった信号の適切な運用や右左折車線の明確化により、クルマの流れを円滑化するための既存設備の運用方法を見直すほうが、渋滞解消の効果は上がると思う。