気がつけばもう26年! ハイブリッドを世に知らしめた「プリウス5代の歴史」がやっぱり凄かった (1/2ページ)

この記事をまとめると

■トヨタ・プリウスは現行モデルで5代目だ

■初代は1997年に登場し、4代目までは常に燃費を追求してきた

■5代目となる新型は燃費よりも走りなどのパフォーマンス面に重点を置いている

ハイブリッドの金字塔「プリウス」を振り返る

 2023年の新車選びにおいて、注目すべきモデルのひとつがトヨタ・プリウスだ。

 2022年11月に5代目モデルを発表、2023年より発売開始となったハイブリッドの象徴的モデルは、従来のエコ一辺倒といったキャラからスポーティな4ドアクーペへと生まれ変わった。ひと目でスポーツテイストを感じられるエクステリアも進化のポイントで、これまでプリウスには目を向けることがなかったようなユーザー層へもアピールするハイブリッドカーへと進化した。

 5代目となる新型プリウスの進化のベクトルが、どれほどドラスティックに変わったのか、それは歴代プリウスの進化を振り返ってみれば明らかだ。あらためてプリウスの進化をハイブリッドテクノロジーを中心に見てみることにしよう。

 かの有名なキャッチコピー「21世紀に間に合いました」を引っさげ、初代プリウスが誕生したのは1997年のこと。その後のプリウスが空力優先ともいえるスタイルとしたのとは異なり、新しいセダン像を示す4ドアボディとなっていた。パワートレインは、1.5リッターエンジンと遊星ギヤ、2つのモーター、そしてニッケル水素電池からなるトヨタハイブリッドシステムを採用。遊星ギヤが動力分割機構として機能するというアイディアは、その後のトヨタハイブリッドにずっと受け継がれることになる。それほど最初から基本メカニズムは完成されていた。

 燃費性能は、当時の基準である10・15モードで28.0km/L。マイナーチェンジ後でも29.0km/Lにとどまった。現在の基準からすると非ハイブリッドでも実現できそうな数値であるが、エンジン自体の熱効率が現在ほど高まっていなかった点、動力分割機構による効率追求がまだまだ甘かった点、そしてボディなど全体で燃費を稼ごうというスタンスが徹底されていなかったことが理由だろう。

 当時は、自動車マニアでもトヨタハイブリッドシステムの仕組みを説明できる人は少なく、発電用と駆動用のモーターを組み合わせた構造を「電気式CVT」と呼んだこともあって、アクセル操作と駆動トルクフィールの乖離を「ラバーバンド・フィール」といった表現で指摘する声もあった。いまになれば電動のみで走行している状態であればダイレクト感がないと指摘することのナンセンスさを理解できるが、初代プリウスの時代には電動=ダイレクト&ハイレスポンスという認識には至っていなかった。

 そんなこともあって、当時の新車ラインアップにおいてはキワモノといった位置づけだったプリウスは、2003年に2代目へと進化する。

 初代とはまったく異なるエクステリアはCd値:0.26という超絶エアロボディとなり、ハイブリッドシステムも昇圧システムを採用したTHS2へとバージョンアップされた。1.5リッターエンジン単体での最高出力は77馬力と初代の58馬力に対してパワーアップしていたが、10・15モード燃費は大台超えの35.5km/Lとなり、エコカーとしてのポジショニングを盤石のものとしたのは印象深い。

 つづいて、2009年に誕生したのが3代目である。デビューのタイミングでハイブリッドカーの購入において給付金を出すという「エコカー補助金」制度が始まったこともあって、爆発的なヒットモデルとなったのはご存じのとおり。燃費性能についても10・15モードで38.0km/L、新たに採用されたJC08モードでは32.6km/Lと2代目モデルを大きく上まわった。

 しかしながら、3代目プリウスのエンジンは最高出力99馬力の1.8リッターとなっていた。排気量を増やして燃費性能が向上するというのはエンジン車の常識からすると信じがたいものだったが、エンジンに余裕をもたせることで効率のいい使い方ができ、高速巡航での燃費も改善したとアナウンスされた。実際、リアルワールドでの燃費も良くなっていたのだから文句のつけどころはなく、トヨタがプリウスで示すハイブリッドシステムの進化は正しいという見方が増えていったのもこの頃だと記憶している。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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