ショボイ「特別仕様」でもバカ売れするほど効果絶大だったのに……新車ディーラーの折り込みチラシが消えたワケ (2/2ページ)

いまではウェブサイトにてPDFなどで見られる程度

 アメリカではその昔、新聞の日曜版に新車ディーラーの広告専用の別冊が用意されていた。そこには日本と同じく買い得価格の特選車が掲載されているのだが、これは実在しなければならず、必ず広告には各買い得モデルにシリアルナンバーがつけられ、その設定台数まで決められていた。ただその買い得車も「ミリタリーディスカウント」など、軍関係者でしか利用できない値引きなどが含まれていた。また、ローン金利0%をうたったものもあったが、アメリカでは個人によって与信で貸付金利がバラバラになるので、細かい条件付きで金利0%をうたっていた。「つまり、まず誰もその買い得車を買い得価格で買うことはできなかったのです。あくまで人寄せパンダのようなものでした」(事情通)。

 時は変わり、いまやアメリカでは紙ベースの新聞は売っている店を探すのにも苦労する状況。デジタル化の遅い日本でも紙ベースの新聞を購読するのは高齢世帯ばかりと言っていい。そうなると、新聞へ折り込みチラシを入れてもなかなか効果は期待できず。いまでは元旦や正月3日の朝刊に初売りセールをうたうディーラーのチラシを多く見かける程度となってしまった。

 各ディーラーのウェブサイトではPDFなどでチラシを見ることができたりするが、週末イベント自体が、新型コロナウイルス感染拡大がひどかったころに自粛となってしまい、いまもそれをひきずり大っぴらに展開していないのが現状。いまでは顧客にダイレクトメールを送る程度の割とひっそりとした告知で週末イベントが行われているようである。

 まあ、いまどきは新車を頼んでも長期間納車まで待たされることも珍しくないので、そのなか「店に来て新車買ってください」とも積極的に言いにくい環境なのだろう。現状では、広く集客することはさまざまな理由から難しい。自ずから既納ユーザーをメインに新車を売っていく傾向が強まってきている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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