あえて今「MTの軽自動車」を選ぶのもアリ!
子育て期に理想的な導線とパッケージングという唯一無二の魅力を持っていたのに、2020年をもってディスコンとなってしまったのがトヨタ・ポルテだ。簡単にプロフィールを説明すれば、1.5リッター級コンパクトのプラットフォームを利用して、運転席はヒンジドア、助手席はスライドドアという左右非対称ボディを与えられたモデル。この魅力は初代、2代目と受け継がれた。また、2代目にはスペイドという姉妹車も存在していた。
ポルテの助手席スライドドアが、とくに便利なシチュエーションは乳幼児を抱きかかえて乗車するシチュエーションだ。助手席がたためるようになっていることもあり、スライドドアから乗り込んで後席にセットしたチャイルドシートに子どもを座らせ、そのまま車内を移動して運転席に座ることができる。親子がタンデムに乗るといった使い方ではポルテに勝るパッケージングは見当たらない。
そんなポルテがディスコンになってしまったのは、日本の少子高齢化により「子育てベストのクルマ」へのニーズが相対的に小さくなってしまったことにあるのかもしれないが、後継モデルがなくなってしまったのは残念だ。
個人的には乳幼児を育てることはないだろうから熱烈に欲しいと思うわけではないが、こうした子育てビークルが充実していることは未来につながると感じるからだ。
最後に、新車で買えるうちにチェックしておいてほしいモデルを紹介しよう。それはスズキ・ワゴンRである。現行型は初代のデザインテイストを感じさせるもので、原点回帰的に軽ハイトワゴンとしての使い勝手を追求したモデル。とくに初代ワゴンRを思わせるスタイリングのベーシックグレードは、121万7700円という手頃な価格設定となっているのもうれしいポイント。
そんなワゴンRの最廉価グレード、じつはトランスミッションが5速MTとなっているのはご存じだろうか。マイルドハイブリッド機構も持たないシンプルな3気筒エンジンとMTの組み合わせというのはいまどき希少だ。しかもFFと4WDの設定があり、FFの車両重量は730kgとハイトワゴンと思えないほど軽量なのだ。
ベーシックな軽ハイトワゴンを、あえてMTで乗るというのはコスト重視というだけでなく、プリミティブを趣味的に味わうという点からもカーライフの選択肢として意識しておくと面白いのではないだろうか。
「ベーシック軽でMTというのならスズキ・アルトのほうが適切では?」という意見もあるかもしれないが、最新のアルトは全車CVTとなっておりMTの設定はない。ここから予想するに、スズキの軽乗用車からMTが消滅する未来は近づいているとも考えられる。気になるようであれば、ラインアップされているうちにMTのワゴンRを検討しておくことをおすすめしたい。