シャシーは寄せ集めでも真っ直ぐ走るししっかり止まる
それにしても、V型12気筒と馴染みのある型式ながら、クルマに積むとなると結構な苦労があったようです。たとえば、航空機は宙返りなど地上では考えられない重力がかかるため、ドライサンプが常識。ザ・ビーストはこれをウエットサンプに改造し、また過給機も省かれています。エンジンルームに収まるよう、また発熱量を少しでも抑えようという工夫ですが、「焼け石に水」かもしれません。なぜなら、ザ・ビーストはエンジン始動直後から猛烈な発熱で、室内がすぐさまホカホカになってくるのだとか。
また、過給しなくとも1000馬力どころか、ドッド氏は「1600馬力までオッケー」とチューニングしたこともあるとか。ラジエターがちょっとしたピアノほどの大きさ、15cmもの厚みが持たされていると聞けば、熱量が危険なレベルであること、容易に想像もつくかと(笑)。
ちなみに、シャシーはオースティンやらジャガーのサブフレームやらの寄せ集め。それでも、テスターによれば、信じがたいことに「まっすぐ走るし、ブレーキも問題ない」とのこと。まったく、イギリス人がやらかす魔改造のトップランナーとはこのことでしょう。
それでも、フォード・グラナダのATギヤボックスごしに140mph(およそ225km/h)をマークするといわれ、デフやらシフトスケジュールをチョイチョイとやれば240km/は出せるようです。
現在、ドッド氏は80歳をとうにこえているのですが「3台めのザ・ビースト、作ってるから!」と意気軒高っぷりをアピール。実際、イギリスでの取材が終わると、ビーストを自ら運転してスペインまで帰ったのだそうです。ロールスロイスも訴えるとか寝言ほざいてないで、技術協力でもしたほうがよっぽどブランディングに役立ちそうなものですがね。
蛇足ながら、ドッド氏は敗訴の後でRRのグリルを外し、自分のイニシャル「JD」をはめこんでいます。
ザ・ビースト同様、ちょっといびつなところがとてもキュートではありませんか!