現代のブレッドバンは550マラネロをベースに製作
イギリスのコーチビルダー「ニールズ・ヴァン・ロイ・デザイン」もそんなブレッドバンをリスペクトしたのでしょうが、彼らが振るったのはGTOやSWBと同じくV12エンジンをフロントノーズに搭載した550マラネロをベースとしたところでしょう。
公式データは詳らかにされていませんが、公式動画を見るとどうやらボディはアルミを板金しての製作と思われます。もちろん、フラットルーフからスパッとテールを切り落としたコーダトロンカが最大のトピックとなっており、ウエストラインから下のバンパーやマフラーの処理などもまずまずの出来栄えかと。
このあたり、マラネロのプロポーションと本家ブレッドバンのニュアンスが大きく異なり、動画によれば大いに苦労したポイントとのことでした。また、荷台(笑)サイドのルーバーも再現しており、オリジナルのマラネロ風味ともあいまってじつにレーシー。
そして、フロントセクションに目を移すと当時のトレンドを模したと思しき大きなエアダクトが設けられているのがわかります。オリジンのブレッドバンも「これでもか」とばかりにダクトが開けられていたので、これまた本家の雰囲気に近づいているでしょう。
また、ブレッドバンで採用されていたボンネットフード上の透明なアクリルドームも忠実に再現されています。本来はキャブレターの吸気口をカバーするためのものでしたが、マラネロのエンジンはインジェクターのはず。ウェーバーを採用したという情報もありますが、これは確認できませんでした。
インテリアの仕上がりも注目に値します。オリジン同様に鮮やかなブルーのアルカンタラに張り替えられたバケットシートや、ワンオフのメーターパネル、あるいはダイヤモンドステッチのレザーで覆われたセンタートンネルやトグルスイッチへの変更など、どこを見ても往時の雰囲気そのまま。これは亡きヴォルピ伯爵だけでなく、エンツォだって一目置かざるを得ない出来栄えといえるのではないでしょうか。
製作者にして、デザイナーのニールズ・ヴァン・ロイ氏は、インタビューでブレッドバンへの情熱を生き生きと語っていますので、興味のある方はそちらを検索してみることおすすめいたします。マシンの走行シーンなどを見ると、本家に負けず劣らずの猛々しさが伝わり、リイマジン的なマシンとしては珍しく胸打たれる思いでした。