タクシードライバーはクルマに興味がない人も少なくない
ある乗務員はあるバスメーカーの観光バスが大好きで、そのバスを使用する事業者を渡り歩いているということも聞いたことがある。「とくに路線バスの乗務員の給料はそれほど多くないと聞きます。それでも働き続ける理由のひとつにはバスが大好きというのがあるそうです」とは事情通。また、ある路線バス事業者で、そのなかでもある営業所で峠を走る路線があるそうだ。その事業者で乗務員募集をかけると「路線バスで峠を走ってみたい」と、営業所と運転したい路線を指定して求人に応募してくる人もいたそうである。
一方でタクシー乗務員ではクルマへの興味があまりない人が多いと聞く(おもに法人タクシーの乗務員)。ある関係者に聞くと、夜間に当直勤務していた運行管理者のいる車庫に、「エアコンが効かない、壊れたみたいだ」と乗務員が駆け込んできたそうだ。運行管理者が当該タクシー車内の空調操作部分をみると、ACボタン(エアコンを作動させるボタン)を押していなかっただけだったそうだ。また別の日には車両点検の時に「フォグランプつけてください」と乗務員に声をかけると、「どのスイッチを使うんだ」と聞き返されたそうだ。趣味的な部分だけでなく、クルマ自体への興味が全体的にあまりないように見えると事情通は教えてくれた。だからといってプロドライバーとしてのプライドが欠如しているとは言うつもりはない。
最近では自動車メーカーのエンジニアレベルでも、ライバルメーカーや海外メーカー車への興味や、海外の最新トレンドに興味を示さない人が目立つとも聞いている。仕事として割り切っているといえば聞こえはいいが、やはり寝る間も惜しんで熱く語り合って車両開発している姿に筆者は好感を持つのだが、今の世の中はそのような働き方を許容していないことがあるのも事実で、なかなか難しいことになっている。大昔に開発者による新車説明会で「同じ釜の飯を食った仲間たちで……」と語っていたメーカーがあったが、そのころの日本車はまさに光り輝いていた。
まあ働く姿勢についてはさまざまな考え方があるだろう。ただクルマ好きを長年貫いてきた筆者としては、筆者と同じシンパシーを感じる、熱い気持ちで働いている業界の人に出会うとなんだか嬉しくなってしまうのである。