「フロア下にスッキリ格納!」はいいことばかりではない?
一方、ステップワゴンの床下格納式は、簡単操作で3列目席をフラットかつすっきりと格納でき(セレナのような最後のベルト固定もなし。戻す際はやや力がいる)、3列目席格納時のラゲッジスペースの幅が犠牲にならないこと、そしてもちろんリヤクォーターウインドウの視界がそのまま確保できるところが美点だ。ただし、左右跳ね上げ式のメリットでも触れたように、あると便利な床下収納は実現できない。
ちなみに筆者は以前、ホンダ・オデッセイアブソルートを所有していたが、やはり車載備品の置き場には困った。現在はステーションワゴンに乗っていて、ラゲッジルームの2層の床下収納に、メンテナンス用品や災害時用のアイテムを積むことができるので、床下収納の便利さを痛感しているところだ。オデッセイの場合は、ボストンバッグにそれらを詰めて、ラゲッジスペースに置いていたが、家族総出のドライブ旅行の際などは、邪魔だった。
ここで、「ラゲッジスペースに床下収納がないと重い荷物の出し入れ性に関わる、ラゲッジフロアが低くできるんじゃない?」という、今回例に挙げたステップワゴンのメリットが思い浮かぶかも知れない。が、最新のMクラスボックス型ミニバンはそうでもない。具体的に3車のラゲッジフロアの開口部地上高を記すと、ステップワゴン530mm(実測では510mm)、ノア&ヴォクシー500mm、新型セレナ540mmと、床下収納を持たないステップワゴンは新型セレナよりは低いものの、ノア&ヴォクシーよりはほんの少し高いことになり、床下収納=ラゲッジフロアの底床化が可能……という法則は成り立たないのだ。
ただし、格納アレンジそのもの以外に、3列目席床下収納式を採用するステップワゴンのメリットがある。それはかけ心地である。ステップワゴンの場合、床下格納するために、3列目席はそれを考慮した厚みでないとすっきりフラットに格納できないのだが、それでも先代に対してシート座面のクッション厚を20mm増し、シートバックを45mm高め、なおかつ着座性、立ち上がり性にかかわるフロアからシート座面先端までの高さ=ヒール段差は先代、ノア&ヴォクシーの約330mmを上まわる2列目席同等の約340mmを実現している。
かけ心地自体も、ステップワゴンのほうがいいと感じる人が実際は多いはずである。ノア&ヴォクシーの3列目席はできるだけ薄く格納することを優先し、この4代目では新たにウレタン×ネット構造のシートを用いているほどである。
というように、3列目席の格納方法によって、アレンジ性、使い勝手や3列目席のかけ心地の違いが生じるわけだが、左右跳ね上げ式、床下収納式にはそれぞれにメリットとデメリットがあり、それはMクラスボックス型ミニバンをどう使うかでデメリットにもメリットにもなりうるということだ。
3列目席をどう使うか、格納使用の頻度などによって判断したいところである。3列目席はほとんど格納して使う……というならステップワゴン、しょっちゅう3背目席の格納したり出したりする使い方なら格納操作性でベストなノア&ヴォクシー、3列目席の片側だけ乗車する機会も少なくないというなら、3列目席格納時のリヤクォーターウインドウ左右の視界の良さからステップワゴン、セレナがいいかもしれない。
ここではMクラスボックス型ミニバンの3列目席格納方法についてのみ比較してみたが、もちろん、デザイン、走行性能、乗り心地、静かさ、燃費性能、価格などを合わせた総合的判断で選択すべきことはいうまでもない。