この記事をまとめると
■パトカーには免許を持っている誰もが乗れるわけではない
■緊急走行ができる「普通技能検定A級」と緊急走行がNGの「普通技能検定B級」がある
■スラロームなどの訓練を定期的に行うほか、高速道路の取り締まりにも別途試験が必要だ
そう簡単じゃない「パトカー乗り」になるまでの過程
「パトカーなんて、運転免許を持っている警察官なら誰でも運転するのでは?」と思っているかもしれないが、警察部内で実施される、自動車運転技能検定に合格しなければならない決まりがある。
警視庁の場合(都道府県によって一部異なる)、四輪=パトカーの運転資格は、普通技能検定と呼ばれ、サイレンを鳴らしての緊急走行が許されるライセンス「普通技能検定A級」と、ミニパトなど緊急走行がNGの「普通技能検定B級」の2種類がある。
クラウンに代表されるいわゆるパトカーに乗務するには、普通技能検定A級が必要で、取得するにはおよそ10日間にわたる「パトカー乗務員養成専科」なる研修を受けて、格付け検定を受験するか、直接、検定合格を目指すしかない。
警視庁の自動車運転技能検定に合格するには
・交通関係法規、自動車の構造、装置に関する学科で80点以上
・運転操作能力、交通法規の履行能力、安全運転に必要な能力など、技能が80点以上
・整備、点検、調整等が、80点以上
・心理適性検査が5段階評価で3以上
という決まりがある。
運転技能に関するトレーニングは、閉庁後の免許センターや所轄の警察署内練習コース、あるいは一般の自動車教習所を借りて、パトカー乗務員(機動警ら官)のなかから選ばれた、技能指導官からみっちり指導を受ける。
運転技術に関しては、スラロームや狭路での取り回し、急ブレーキ、交差点通過時の安全確認、片側のタイヤのみを細い板に載せてバランスを崩さない……などの実技を先輩隊員の指導をもとにトレーニングを行う。
晴れて、A級検定資格に合格すると、パトカーを運転する資格、いわゆる「青免」(資格者証の台紙が薄い青色であることからそう呼ばれる)を得ることに(B級検定者は、「黄免」だが、緊急時に限り、上長の許可があれば、「黄免」や普通自動車免許しか持たない警察官でもパトカーを運転していいことになっている)。
一般のドライバーが教習所で免許を取る際、技能試験の合格点が70点以上だったことを考えると、警察の自動車運転技能検定の合格点が80点以上というのはそれなりに厳しいものといえるだろう(もちろん、コースは同じ試験場や教習所だったとしても、審査される課題もより難易度は高い)。
また「青免」を取得したあとも、定期的な研修や、ベテラン隊員からの熱血指導もあるので、日々のスキルアップに怠りはない。
なお、成績不審者には教習所などで追加訓練も行なわれている。
さらに、高速道路で取り締まりを行う、「高速道路交通警察隊員」になるためには、別途特別な試験を受け、訓練所で半年ほど専門的な訓練を受けることが必要だ。
都道府県によっては、鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎ、あるいはASTP(アクティブ・セーフティ・トレーニング・パーク)などを使った、スペシャルトレーニングも行っているところもある。そして北海道や東北、信州(長野県)などの警察では、雪道や凍結路面での運転訓練も実施する。
全国一律ではないにせよ、パトカー隊員は、運転のプロとして、それなりに日々運転技術を磨いていることを覚えておこう。