この記事をまとめると
■ドイツ車と日本車ではそのドライブフィールに明確な違いがある
■ドイツ車が走行特性と耐久性を重視した視点を持つのはアウトバーンが存在することも大きい
■ドイツ車を選ぶ人は奥が深いドイツ車の走りの深淵に触れて魅了された人達だ
世界中でクルマのベンチマークとなっているドイツ車
クルマ好きの多くがドイツ車を絶賛する。1度でもドイツ車を所有したり運転したりしたことがあれば、国産車のドライブフィールと明確な違いがあることに気がつくだろう。
ドイツ車の多くはプレミアムブランドとして世界中で認知されている。価格も高いのだから走りが良くて当たり前、という意見もあるだろう。だが、国産車にも高額なモデルは存在するが、それでもドイツ車の走行感覚とは違う。この「違い」はいったい何が起因して起こっているのだろうか。じつは国産メーカーにとっても、その原因を追求できていない一面もある。
国産メーカーは新型車を開発する中でベンチマークとなる競合車を選び出し、徹底的に分析研究する。大抵は2台の対象車両を購入し、1台は走行試験に用い、1台はネジ1本にいたるまで完全に分解してコスト算出も行うという。それでも突き止められない走行フィールの違いとは一体どこに原因が隠れているのだろうか。
自動車メーカーの開発者以上に世界中のさまざまな自動車をテスト走行させているのがモータージャーナリストだろう。有名なモータージャーナリストであれば海外の試乗会にも呼ばれて参加し、開発者に直々に話を聞くことができる。こうしたモータージャーナリストの知見と国産メーカーの開発意欲が符号して協力し合うことができれば、「違い」の原点を突き止め、国産車にフィードバックすることが可能になる。
じつは僕自身、そうしたプロジェクトに参加した経験がある。数多くの試乗経験からドイツ車の走行感覚に独特な美点があることに気がつき、その原点を探る努力を、機会がある毎に探ってきていたことが評価されたのだ。
はじめてドイツ車の走りに感動を受けたのは、1980年頃に試乗した初代フォルクスワーゲン・ゴルフ。たっぷり取られたサスペンションストロークと低速トルクの豊かなエンジン特性、FFでありながらアンダーステアが弱くライントレース性に優れていて車体剛性の高さも感じられた。
同じ頃、やはり初代BMW 5シリーズセダンに試乗。FRレイアウトの後輪駆動モデルでリヤLSDを備えていないのに、コーナーをカウンターステアで意のままに操れることに感動した。このころの国産車はどのモデルもアンダーステアが強くテールスライドさせることが難しかっただけに、BMWの動的特性には感動したのだった。
ともすれば自分のドライビングが間違っているのではと悩んでしまうところを、BMWが正してくれたといっても過言ではない。
その後もアウディ、メルセデス・ベンツ、ポルシェなど、試乗したどのモデルも同じような走行フィールを持っていて、ドイツ車の走りの魅力に惹きつけられたものだ。