むしろ不便になった感! 新車を買ったら「電子化された車検証」だった (2/2ページ)

A6の紙に車検有効期間満了日は記載されていない

 気になったのは以前は車検有効期間の満了日が記載されていたが、ICタグが貼り付けられたA6の紙には車検有効期間満了日は記載されていない。新車ディーラーなどでしっかりメンテナンス管理されていれば、「そろそろ車検ですよ」といったDM(ダイレクトメール)などが届くが、専門業者の管理が行き届いていなければ今後は車検切れのまま乗り続ける人が増えるのではないかとセールスマンは心配していた。

 筆者は定期的にテレビで放映される“警察24時”的な番組が大好きで毎回楽しみにしている。そのなかの“職務質問コーナー”において、警察官に呼び止められた車両のドライバーに職務質問しているシーンで、「その時警察官の目に、ある重要なものが目に入った!」といったナレーションで、フロントウインドウに貼られた車検ステッカー(検査標章)を見て車検切れ車両であることがわかったシーンを時おり放映している。ある時には車検切れを指摘された若いドライバーが「車検ってなんすか?」と警察官に聞き返していた。

 アナログ時代の車検有効期間満了日が記載された車検証のころですら、すぐに車検証が確認できる環境にあっても車検証を見る機会など滅多になかったのに、専用アプリでQRコードにてスキャンしてまで「車検はいつまでかな」と確認する人はそんなに多くないのではないかと筆者は考える。フロントウインドウに貼られるステッカー(検査標章)の位置がドライバー側上部になるようで、ドライバーからは「運転していると邪魔だ」などとブーイングが沸き起こっているが、国土交通省が車検証の電子化により車検切れ車両の増大を懸念している現れなのかもしれない。

 日本よりもはるかに社会のデジタル化が進んでいるアメリカでは、ナンバープレートの電子ペーパー化がいよいよ本格化しようとしている。しかし、筆者が昨年アメリカを訪れレンタカーを借りた時には、車内に義務で置かなければならない車両登録書はいまでも紙ベースのものであった。デジタル化は社会の利便性を高めるものであるが、日本のデジタル化、とくに公官庁のデジタル化は違う方向に進んでいるように見えてならない。

 現状でもひんぱんに、市役所などの公用車が車検切れのまま使用されていたといったニュースが流れているので、車検切れのまま乗る人が特別な人というわけでもない。日本に住んでいれば慣れているとはいえ、お役所関係のデジタル化の際には副作用がないかどうかもじっくり検証して欲しいものである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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