BMWには負けられないメルセデス・ベンツの意地が結実
とくに素早い反応を見せたのはメルセデス・ベンツで、1986年には190Eをベースとした190E2.3-16を発表。その車名にも示されているとおり、2.3リッターの直列4気筒のDOHC16バルブエンジンはコスワースの手によるもので、それ自身の戦闘力は十分に高かったものの、車重の重さが影響してか1986年から1988年までタイトルを奪取することはできなかった。
一方のBMW M3は、1987年のM3エボリューション、1988年のM3エボリューション2を経て、1989年には正常進化型となるM3スポーツエボリューションを発表。1990年シーズンから実戦に投入されたこのマシンには、DTMのホモロゲーション変更に合わせ、新型の2.5リッター直列4気筒16バルブエンジンを搭載。戦闘力をさらに高めた。
これに対抗してメルセデス・ベンツが送り込んだのが、やはりコスワース製の2.5リッターエンジンを搭載し、エアロパーツを控えめにチューニングした1988年製の190E 2.5-16、1989年製の190E 2.5-16エボリューション、そして1990年に最終進化型として誕生した190E 2.5-16エボリューション2の各モデルだ。
とくに190E 2.5-16エボリューション2は、トランク上におよそCピラー半分の高さにも匹敵する巨大なリヤウイングを備え、前後にはグラマラスなブリスターフェンダーを、そして独特なデザインの前後スポイラーを有しており、そのスタイルはメルセデス・ベンツの伝統的なファンから眉をひそめかねられない造形だったのかもしれないが、結果的にメルセデス・ベンツは、この通称エボ2によって1992年にようやくDTMのタイトルを獲得することに成功しているのだ。
ちなみにこの190E 2.5-16エボリューション2は(その前作であるエボリューション1も同様だが)、いずれもグループAのホモロゲーションを得るため、実際にロードカーの販売も行われ、その数は各々500台。とくにエボリューション2の人気は高く、現在でもオークションシーンなどに姿を現すと、非常に高値でそれが取り引きされる場面に出くわすことになる。
その独特なアピアランスと190シリーズの最終進化型という成り立ち。そしてなによりDTMを制覇したマシンであるというヒストリーが、その高評価を生み出す理由となっているのは確かなところだ。