この記事をまとめると
■韓国では「軽車=キョンチャ」と呼ばれるコンパクトカーの規格がある
■カムリ以上のサイズに乗るのがステイタスであったが最近は変わりつつある
■サクラやeKクロスEVの売れ行きを考えると日本は海外製軽BEVが参入しやすい環境にある
韓国では軽自動車に値するコンパクトカーが多く走っている
先日インドへの出張の際に羽田を出発しソウルの金浦(キンポ)空港に降り、仁川(インチョン)空港からインドの首都デリーへの乗り継ぎ便を利用した。そしてインドからの帰路も同じ流れなのでせっかくだから、ソウルでストップオーバーし、2日間ソウルの街を歩くことにした。
ソウルの街を歩くのはじつに6年ぶりなので、歩き始めるといくつかの変化にすぐ気が付いたのだが、そのなかの1つが韓国版軽自動車(韓国では軽車=キョンチャと呼ぶ)を多く見かけたこと。韓国にも日本の軽自動車のようなカテゴリーが存在し、税金など日本と同様に優遇策が存在している。その規格は排気量1リッター以下で、乗車定員は5名。全長3600(+200)×全幅1600(+120)×全高2000(±0)mm 【( )内は日本の軽自動車との差】となっている。排気量、寸法ともに日本の軽自動車規格よりひとまわり大きくなっているといっていいだろう。
韓国政府は1983年に国民車普及計画を立てた。そして1991年に当時の大宇(デーウ)自動車(現韓国GM/GM KOREA)が3代目スズキ・アルト(1988年~1994年)をベースに開発、660ccではなくスズキ製の800cc直3エンジンを搭載した「大宇ティコ」が韓国の軽車の源流とされている。
そして1998年にはティコの後継モデルとして、当時のGM(ゼネラルモーターズ)大宇がマティスをデビューさせた。韓国の軽車規格に合わせ日本の軽自動車よりサイズアップしながら、エンジンはスズキ製の800ccエンジンを搭載していた。このマティスは海外にも輸出されており、中国でもシボレー・スパークとして現地で生産し販売していたが、奇瑞(チェリー)汽車がチェリーQQというコピー車(ほぼ完コピ状態)をラインアップし、訴訟問題に発展したこともあった。
当時日本でも輸入販売されていた時期もあり、筆者も試乗したことがあるが、日本の軽自動車よりひとまわり規格が大きくなると、安定感など走行性能がここまでアップするのだなあと感心したのを覚えている。
当時は現代(ヒョンデ)自動車からアトスといったライバルモデルも登場していたのだが、2022暦年締め(2022年1月~12月)での年間販売台数で約163万台を売る日本の軽自動車に対し、韓国では2012年の約21万台を最高に販売は伸び悩んでいたそうだ。調べてみると、韓国ではクルマはいまだにステイタスシンボルであり、日本車でいうところのカムリサイズ以上に乗るのがステイタス、つまり「大きいことはいいことだ」という風潮が根強いこともあるようだ。しかし、今回その韓国のソウルを訪れると軽車が目立っていた。
地元メディアによれば、その社会的背景は原油価格の高騰と韓国経済の不振傾向があるようだ。とくにガソリン価格の高騰は韓国でも大きな社会問題となっており、燃料消費の少ない軽車に自動車ユーザーが流れやすくなっているようである。そして、さらに軽車の存在を強めたトピックとしてはヒョンデ・キャスパーのデビューも大きいようだ。例えていえばスズキ・ハスラーのライバルともいっていい、CUV(コンパクト・ユーティリティ・ビークル)スタイルを採用し、軽車規格内に収まるキャスパーは2021年9月にデビューしている。ヒョンデはしばらくの間、軽車をラインアップしてこなかったので久しぶりのヒョンデブランドの軽車となった。
全長3595×全幅1595×全高1575mmとなり、1リッター直3ターボを搭載している。このキャスパーの存在が韓国において軽車の販売台数を押し上げているのは間違いないようで、軽車全体で見ても2022年の年間販売台数が2021年実績を上まわる事態になっているとのことである。