エンジンの他に3つのモーターを搭載
パワーユニット
アキュラNSXはJNC型3.5リッターV6ツインターボエンジンに加え、3つのモーターがアシストするハイブリッドスポーツカーです。
このハイブリッドユニットは、基本的にエンジンにより発電した電力でモーターを駆動するシリーズ式ハイブリッド。
ただし、走行状況によりエンジンで駆動したほうが効率的なシーンでは、直結クラッチによりエンジンのみによる走行も可能。さらにエンジンの動力にプラスしモーターアシストを加えるパラレル式の要素も併せ持つのが特徴です。
モーターとともに搭載されるエンジンは排気量やV6のため、レジェンドと同じ形式かと思いきや実は専用設計のパワーユニット。先程、お伝えしたようにアキュラNSXはこのエンジンを縦置きに搭載していますが、開発当初は横置きレイアウトを採用予定だったといいます。
ただ、500馬力以上のパワーを実現するためエンジンやトランスミッションの無理な小型化を諦め、縦置きレイアウトを採用しました。
結果、エンジンの最高出力は507馬力を発揮。3つのモーターのパワーを合わせるとシステム出力は581馬力を誇っていました。
スポーツハイブリッドSH-AWD
先程、お伝えしたようにアキュラNSXにはエンジンの他に3つのモーターを搭載していました。
ひとつはクランクシャフトに直結し、リヤを駆動するメインモーター。さらにドライブシャフトを介して前輪を駆動するツインモーターユニットが車体中央に装備されています。
このユニットは左右独立2つモーターをワンウェイクラッチでつないだもので、このシステムのトルクペダリングやブレーキ制御によりコーナリング時の旋回力を高めていました。
発売当時、アキュラNSXに試乗したメディアの多くが旋回性に対して「オンザレール」と評していましたが、これはツインモーターユニットそれぞれの制御を行うことで実現していたのです。
またハイブリッドユニットと組み合わされるトランスミッションは、専用設計された9速DCT。9速をハイレシオ設定としたことで、高速走行時に燃費性能を高めています。
室内空間、装備
ガーニッシュが目を引くインパネや上部が平たくなったステアリングなど、スポーツカーらしい空間に仕立てられたアキュラNSXのインテリア。ただ、力強さとともに上質さも印象付けられていました。
メーターは新時代のスポーツカーらしく、TFTディスプレイのデジタル式を採用。状況に応じて表示を切り替えることが可能です。
発売当時、ゴルフバッグを積載可能なことでも注目を集めた初代同様、アキュラNSXにも実用的なラゲッジルームを備えています。ただ、パワーユニットを縦置きにしたことなどで残念ながらゴルフバッグを積むスペースを確保することはできませんでした。
「Type S」とは
2022年、アキュラNSXの最終モデルとして限定販売されたのが「Type S」です。
前後バンパーを専用デザインとし空力性能を向上。ホイールも新たにデザインされ、ワイドトレッド化されました。
Type S最大の特徴がパワーユニット。システム自体に変更はありませんが、エンジンの最高出力を529馬力にパワーアップ。システムトータルでは610馬力となりました。
このType Sは世界で350台限定販売となり、国内では30台ほどが販売されています。
生産設備
アキュラNSXが生産されていたのはアメリカのオハイオ州にある専用工場。PMCと呼ばれる専用工場を立ち上げ、多くの工程で手作業での車両生産を行っていました。
とはいえ溶接などは100%ロボット化を実現するなど、品質管理を徹底することで高級スポーツカー生産のクオリティを可能としていたのです。
このPMCはNSXの生産が終了となった現在、どうなったのかと思っていましたが2024年からCR-Vをベースにした新型FCEVの生産を行う拠点となるそうです。
アキュラNSXの中古車相場
アキュラNSXの中古車相場は2180万〜3000万円。ただ販売されている台数は初代(75台)より少ない、わずか18台しかありません。
いずれも走行距離は0.1万〜3万kmと少なく、なかには500km以下の車両も見受けられます。生産中止となったことで、アキュラNSXの中古車は販売中より注目されているようです。
ちなみに初代NSXの中古車相場は640〜2200万円。こちらは相場が高値安定、というよりも年々、上昇しています。とある専門店では「ウチで7年前に400万円で売った中古車を、昨年、販売したオーナーから490万円で購入した」と、何を言っているのかわからないような相場になっていました。
ただ、初代NSXの中古車は数も限られており、販売については専門店を通して所有者から信頼できるお客さんへ販売することが増えているそうです。
信頼できるとは、段階的にレストアを進めてきた所有者からそれを引き継いで車両をそのまま整備し続けてくれる人。そのようにちゃんと手入れされ続けてきた車両が相場を押し上げているのかもしれません。
先程、コメントしてくれた専門店のオーナーに初代NSXを安く買う方法がないかを聞いたところ「AT車は人気薄なので比較的購入しやすかったが、いまは高くなってしまった。それでも一番安く買える仕様はAT車の黄色」とのこと。中古車として出回るかどうかわかりませんが、初代NSXの購入を考えている方は参考にしてみてください。
まとめ
販売が終了したことで、いまや話題になることもなくなってしまったアキュラNSX。見た目もかっこよく、また走行性能も高いハイブリッドスーパーカーだったにもかかわらず人気を得ることができなかったのは偉大な先代となる初代NSXの存在が大きかったことが挙げられます。
初代とはまったく異なるコンセプトを採用したことで、初代のオーナーやファンからの支持を得られなかったアキュラNSXは、ある意味、不運なクルマでした。
ただ、パワーユニットにハイブリッドを採用したことなど、ホンダらしさが溢れていたスポーツカーであることは確か。個人的には、もっと評価されて良いモデルだと思います。