渋谷の「ハチ公バス」にEVを導入! だが車両は「中国のOEM」に見える日本の出遅れ感 (2/2ページ)

EVモーターズは日本で工場を稼働させる予定

 乗用車では韓国ヒョンデ自動車のBEV、アイオニック5が日本国内でオンライン販売のみですでに500台以上販売しているとのこと。さらに中国・比亜迪(BYD)汽車はつい最近日本でクロスオーバーSUVタイプのBEV、ATTO3(アット3)を発売したばかり。ほかドイツ系を中心にすでに多数のBEV輸入車が日本国内で販売されている。世界的に日本メーカーのBEVにおける出遅れムードがクローズアップされているが、それでも乗用車では日産サクラや三菱eKクロスEV、日産アリア、日産リーフ、トヨタbZ4X、スバル・ソルテラなど日系ブランドのBEVも国内で複数ラインアップ。商用、とくにバス車両では日系バスメーカーでは、ラインアップのない状況となっている。つまり、バス事業者がBEVバスの導入を検討しても純国産BEVバスを選択することができなくなっているのである。

 現状ではEVモーターズをはじめ、BYDなど複数の中華系バスが、大型路線タイプも含め販売され、実際に導入されている。しかし前述したEVモーターズのように、程度こそ違うかもしれないが中国でラインアップされている同型車でも、中国でのスペックをそのままに右ハンドルにしてそのまま導入しているというケースはまずない。もちろん非常口の場所などの法規対応はあるが、電池をはじめ日本向け車両には日本製パーツを積極的に採用しているのである。

 この背景には、日本国内でパーツ供給できるという利便性もある。昨今では経済安全保障という言葉が飛び交っている。今後日本と中国で政治レベルでの対立が激化すれば、中国政府が日本への中国製BEVバスの補修部品の出荷停止や制限を行う可能性も否定できない。このあたりも、日系メーカー製BEVバスが存在せず、地理的に近く、しかもBEVバスの分野では日本より明らかに中国メーカーのほうが開発ノウハウや販売実績があるので、現状では中華系バスの導入が現実的ではあるものの、政府レベルではなかなか声を大にして“中華系バスで”ともいえないようだ。だが、マーケティングリサーチに長けている中国側が日本のバスのあり方を十分理解し、今回のEVモーターズのように、受け入れる日本側の努力などで先手を打っているようにも見える。

 ちなみに、EVモーターズでは近い将来日本国内において組み立て工場を稼働させる予定とのこと。日本国内での需要動向を見て生産車種をどうするかは決めていくとのことだが、こうなると従来の日系バスメーカー以外に新たな国産BEVバスメーカーが名実ともに誕生することになるだろう。

 単に車両だけを販売しているわけではなく、EVモーターズだけでなく、BYDも導入事業者には充電施設をどうするかなど、“エネルギーマネージメント”も行っているとのこと。バスを問わず、日系メーカーもBEV開発を進めているが、とにかく諸外国のメーカーに比べてスピード感を感じられないのも致命的に見える。“2026年には……”というような報道も目立つが、少し前のパソコン並みに日進月歩し、群雄割拠しているいまのBEVなどZEVの世界ではこれから3年後なんて、その時のトレンドに対応できるものがここまで出遅れているなかで出せるのか甚だ疑問である。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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