この記事をまとめると
■ダイハツは創業当時から三輪車の製造に長けていた
■乗用モデルの三輪車として1951年に「ダイハツ Bee」というモデルが登場した
■現存台数は3台と言われており幻のクルマとなっている
タクシーユースを想定した幻の三輪車
ダイハツの三輪自動車と言えば1950年代後半から1970年代まで生産が続けられ、高度成長期の日本を支えた三輪軽トラックのミゼットが知られるところ。
そんなダイハツ自体は、1930年に自社製の4サイクルエンジンを搭載したオート三輪の「ダイハツ号HA型」で自動車業界に参入。翌31年には改良を施した「HB型」を市販するなど、三輪自動車については長い歴史を誇るメーカーでもあるのだ。
そのダイハツが1951年に発表した三輪乗用車の「ダイハツ Bee」は、長らくオート三輪で商用モデルを作ってきた同社が初めて手掛けた本格的な乗用モデルとなっていた。
このBeeは、オート三輪の機構を流用して乗用車としたモデルというわけでなく、乗用モデル専用に開発された低床シャシーを持っており、リヤエンジン・リヤドライブの駆動方式や、リヤに独立懸架サスペンションを採用するなど、かなり先進的な構造を持っていたのである。
ダイハツの発表によると、搭載されたエンジンは804ccの排気量を持つ空冷水平対向エンジンで、これは日本初となるもの。最高出力は18馬力で最高速度は78km/hを誇っていたという。
エクステリアデザインも、フロントが1輪であることを除けば乗用車らしい堂々としたものとなっており、ややアップライト気味に仕立てられたキャビンは商用車とは一線を画す広い室内空間を持っていた。
じつはこのBee、当初からタクシー車両としての需要を見込んでいたようで、前述のキャビンの形状もそれを見越したものとなっていた。ただタクシーとして供される上で高い耐久性が必要なのは今も昔も変わらないようで、リヤを独立懸架方式にしたが故にドライブシャフトの耐久性に難があり、発進時や悪路(当時はまだ舗装路も完備されていなかった)でトラブルが発生するケースが続発。
結局、独立懸架方式サスペンションによる乗り心地の良さなど、メリットも存在してはいたものの、Beeをタクシーとして活用する目論見は露と消えてしまい、早々に生産終了となってしまった。
その後は急速に市場から姿を消していき、現在現存が確認されているBeeはわずか3台とも言われている。
その中の1台はダイハツの史料展示館である「ヒューモビリティワールド」に収蔵されており、企画展などのタイミングでその姿を見ることができるようになっている。