見た目だけは一丁前!
そういう意味では、マンガ「頭文字D」に登場したことによって狼の皮をかぶった羊的な扱いをされている「AE85」も不憫なモデルといえる。
いうまでもなく「AE85」というのはAE86型カローラレビン/スプリンタートレノに設定されていた廉価グレードの車両型式のことだ。AE86が1.6リッターDOHCエンジンを積んでいたのに対して、AE85のエンジンは1.5リッターSOHCだった。排気量的にはわずかな違いに感じるが、当時のカタログスペックではAE86が130馬力だったのに対して、AE85は85馬力と大きく異なっていた。
AE86が神格化されていくなかで、なんちゃってハチロクといった風情のAE85はバカにされる存在となったわけだが、ハチゴーがあったからハチロクが存在できたともいえる。
4ドアボディのカローラがFF化する中で、スポーティなクーペモデルだけはFRを残すという英断があったから”ハチロク”は伝説となったが、廉価版の”ハチゴー”を用意することで専用ボディの生産量を確保するといったことをしなければ、商品企画として通ることは難しかったであろう。ある意味では、ハチゴーがあったからハチロクは存在できたのだ。
冒頭、「羊の皮をかぶった狼」というフレーズはスカイラインによって生まれたというエピソードを紹介した。スカイラインに敬意を表して(?)、後年に生まれたスカイラインのなかから、もっとも「逆・羊の皮をかぶった狼」といえるモデルを考えてみたい。
さまざまな意見はあろうが、筆者が考えるのは8代目スカイラインのエントリーグレード「GXi」である。8代目スカイラインといえばR32という型式でおなじみ。コンパクトなボディは走りを重視したもので、第二世代GT-Rが誕生したモデルとしても知られている。
※画像はGTS25 Type X G
基本的にR32スカイラインは6気筒エンジンを積んでいた。GT-Rには2.6リッターツインターボエンジン、標準ボディの最上級グレードといえるGTS-tには2リッターターボエンジンとなっていたのはご存じの通りだ。
しかし、GXiだけは1.8リッターの4気筒エンジンだった。エントリーグレードに1.8リッターエンジンを積むというのはスカイラインの伝統ともいえるもので、それ自体は珍しくないのだが、外観で差別化しなかったのがGXiを「逆・羊の皮をかぶった狼」たらしめている。
ポイントはテールレンズのデザインにある。スカイラインといえば丸4灯テールがアイデンティティだったが、7代目までは4気筒エンジン車だけは角テールとしてひと目で違いがわかるようデザインされていた。
そうした識別点がなくなってしまったことで、8代目スカイラインのGXiは一見すると2リッターターボ車のように感じられることもあった。もちろん、ちゃんと見ていくとタイヤサイズやブレーキの仕様、ホイールの穴数など外観でわかる違いは多かったのだが、識別ポイントを知らない世代にとっては「こんなグレードがあったのか」と驚いてしまうかもしれない。
※画像はGTE Type X