【試乗】電動化時代の「リヤ駆動」のアウディ! Q4 e-tronに「らしさ」はないけど「いいクルマ」であることは間違いなし (2/2ページ)

あえてFRとなっているところに新しいアウディらしさを感じる

 車重が2100kgあることもあり、加速はテスラのように強烈というわけではない。むしろ自然なフィーリング。ダイナミックモードを選べば俊敏なダッシュも得られる。回生ブレーキの程度はBレンジのほか、パドルでも調節できて便利だが、こちらも唐突な効きではなかった。ジャーマンプレミアムブランドとしての完成度の高さを意識したのだろう。

 低速ではウォーンという電動車独特の警告音がキャビンに届くものの、スピードを出してそれが消えれば、ロードノイズを含めて静か。それだけに、最近まろやか方向にシフトしつつあるアウディとしては、ゴツゴツ感の残る乗り心地は気になった。Q4 e-tronは高速道路や峠道を疾走するようなキャラクターではないわけだし、重心は低いはずなので、もう少し乗り心地に振ってもそんなにデメリットは出ないはずだ。

 ハンドリングはやはり、低速ではリヤ駆動ならではの旋回感が印象的。同様のドライブトレインを持つHonda eに似ている。前輪駆動とクワトロが主力だったこれまでのアウディでは体験できなかった感触だ。ただ速度を上げるとその性格は控えめになり、低重心で前後の重量バランスに優れるという、多くの電気自動車に共通する利点が味わえる。硬めの足のおかげか、背の高さからくる不安感もなかった。

 つまり、走りの面でのアウディらしさというのはあまり強くは感じられない。でも機械としての洗練性の高さやバランスの良さは感じられるし、ジャーマンプレミアムブランドということを考えれば、同クラスの日本勢に匹敵する620万円からという価格は魅力的だ。

 それに、そもそもアウディはエンジンの個性は控えめで、クワトロによる安定性をアピールしてきたブランド。それを考えると、「静かで低重心という電気自動車との相性はいいのでは?」と思ったりもした。


森口将之 MORIGUCHI MASAYUKI

グッドデザイン賞審査委員

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2023ルノー・トゥインゴ/2002ルノー・アヴァンタイム
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ネコ、モーターサイクル、ブリコラージュ、まちあるき
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