この記事をまとめると
■最近は日本車メーカーでも旧車のパーツ復刻をするサービスが浸透してきた
■それでも国産旧車のパーツが復刻されるのはほぼ人気モデルに限られている
■旧車へのサポートをブランディングと捉え、全メーカーに廃番パーツ復刻を実施してもらいたい
廃番パーツ復刻はコストや職人の引退など苦労が多い
モノを大事に使うという美徳がないがしろにされて久しい日本ですが、旧車好きという温かくも尊い気持ちを持った人々は大好きなクルマを後生大事にしているかと。また、旧車オーナーの熱望を汲み取って、パーツを復刻して再販するメーカーもちらほらと現れている今日この頃です。
愛車のパーツが廃番となり、泣く泣く手放さざるを得なかった方や、パーツ供給が心配で旧車に手を出せなかった方にとっては嬉しいニュースに違いありません。また、パーツの復刻にいたるまでの苦労や困難といったメーカーのエピソードは、旧車オーナーでなくともクルマ好きなら胸アツとなること請け合いです。
そもそも、復刻パーツやヘリテージパーツと呼ばれるものとは、新車発売から時を経て、廃番となってしまったパーツを再生産したもの。一般的にメーカーは、発売後に部品のストックをしておく期間が法律で定められており、これを過ぎると「在庫あるだけ」となってしまうのが普通です。が、発売からかなりの期間を過ぎても現役で走ってるクルマや、古くなってもファン(オーナー)が数多く存在しているクルマにとって部品の廃番は「死刑宣告」に等しいもの。そこで、国内でもいくつかのメーカーが、そうした車種の重要部品やニーズの多いパーツを復刻する動きが活発化してきたわけです。
たとえば、2019年からスタートしたGRヘリテージパーツプロジェクトでは、40系ランクルや2000GT、あるいは70/80系スープラの補給部品の一部を生産、発売しています。40のランクルは1960年代のクルマですが、国内外を問わずいまだ現役として活躍しているタマも数知れません。とくに海外は車検制度のようなものが日本とは大いに異なるため、50年くらい前のクルマだってブイブイ言わしてますからね。
とはいえ、すべての部品が再生産されているわけではありません。走る・曲がる・止まる性能に関わる重要パーツの供給に的を絞っていることも留意しておくべきでしょう。
なぜ、すべてのパーツが再生産できないかというと、まずはコストがかさむことが大問題。たとえば、現在ではあまり見ることがなくなったウェザーストリップ(窓枠などの防水・防振に使うゴム)などは当時の金型がすでに廃棄されていたりして、再び金型から作ったとすると目玉が飛び出る値段になると聞きました。あるいはコストを度外視したとしても、当時の製作技術を知る方がすでに引退していたり、製作機械がない、同じ材料が手に入らないなど、ネガをあげればきりがありません。
また、クルマメーカーが掛け声をかけたとしても、外注の部品メーカーにも都合があるわけで、もろ手を挙げて「それ復刻だ!」というケースは意外と少ないのかもしれません。