スポンサーシップによる宣伝効果で一躍メジャーに
マテシッツ氏がマーケティング分野でも有名な立志伝中の人であることはご承知のとおりですが、個人的には愛郷精神の熱さで尊敬しています。たとえば、オーストリア出身で元F1パイロットのゲルハルト・ベルガーは同社が初めてサポートしたスポーツ選手としてつとに有名。さらには、引退後もレッドブルF1のサテライトチーム、トロ・ロッソを任せたりするなど、ベルガーとマテシッツ氏は固いきずなで結ばれていたといっても過言ではありません。
また、オーストリアのバイクメーカー、KTMがモトGPに参戦するときにもフルスポンサードして、レッドブルKTMファクトリーレーシングとしてエントリーするなど、やろうとしてもなかなか実現しづらいことをあっさりとこなしているあたり、マテシッツ氏の底力恐るべし、といったところでしょう。
このほかにも、エアレースや砂漠のラリーなどスポンサーシップには枚挙にいとまがありません。とりわけ、オーストリアのザルツブルク、アメリカのニューヨークでサッカーチームを個人的に買収したことは、氏のサッカー好きが垣間見えて、ちょっとほほえましくもあります。
こうしたスポンサーシップはもちろん、マーケティング、売り上げのためではありますが、日本人として忘れがたいのは2011年、レッドブルによる東日本大震災復興イベント開催ではないでしょうか。同年6月、なんと横浜中華街をレッドブルのF1マシンが爆走! しかも、ドライバーはトロ・ロッソのセバスチャン・ブエミとなれば、集まった1万人の観衆も鬼アゲ間違いなし。
機を見ること敏にしてとは言いますが、商売だけでここまでやるわけでもありますまい。残念ながら、マテシッツ氏は2022年にこの世を去っていますが、彼の志や優れたマーケティング手法は薫陶を受けた多数の部下、チームにも引き継がれている模様。現に、巨大なレッドブルを背中にしょった宣伝カーが今でもそこら中で発見できるでしょう。
ついでに言えば、この原稿も深夜に翼を授けてもらえなかったら、締め切りには到底間に合わなかったのですから(笑)。